今後のことを考え相続のことも話をした方がいいけど、【相続税】というものも意識します。
実際に【相続税】ってどういうもので、いくらくらいかかるかわからない。
ざっくりどう考えておけばいいのかなぁ?
【相続税】は、住民税や所得税、消費税等と比べ馴染みが薄く、いったいどう計算されるのかわからないことが多いかと思います。
【相続税】の大まかな計算手法、控除額、土地や建物を相続した場合の考え方を解説してきます。
【結論】計算手法はシンプル
・不動産の評価減・配偶者軽減制度・生命保険非課税枠を考慮
・資産家やイレギュラーな話は税理士に相談
【相続税】の計算は相続資産を確定させることができれば、後は基礎控除を引いて、残った額を振り分けて、各相続人ごとに相続税を計算。各相続人ごとの相続税を全て足して、実際に相続した資産ごとに割り振りをしていきます。(言葉で書くとちょっとややこしいのですが)
ただ、実際に相続税を支払っている方は全体の8.8%(2020年生命保険文化センター調べ)です。普通の家庭では相続税はおおよそ発生していませんし、仮に相続税が発生してもそこまで高額ではないかと思われます。
このブログでは一般の会社員の方々に向けてのサイトですので、資産家の方やイレギュラーな相続の話は税理士の方々に相談をお願いします。
実際に相続税が発生しなくとも相続税の計算手法は知らないと税務署へ申告できません。
計算ロジックや不動産の評価の考え方、優遇制度について説明します。
【相続税】計算ロジック
【相続税計算の流れ】<ややこしいけど、まずは流れを抑えて>
【相続遺産】ー【基礎控除】➡️ 【課税対象の相続遺産】➡️【各法定相続人ごとに計算】➡️
【各相続税を合計】➡️【実際の相続額の割合で各人の相続税計算】➡️【各人ごとに相続税支払】
相続遺産が下記の基礎控除内であれば、相続税はかかりません。9割の方が相続税を支払っていないので、多くの方が基礎控除内での相続資産化と思われます。
相続遺産が基礎控除より多い場合は下記計算に進んでください。
相続税の税額を計算するには、まずは「相続税の総額」を算出します。「相続税の総額」は、実際の遺産分割をどうするかに関係なく、遺産総額や法定相続人の数・法定相続分を用いて算出する仕組みになっています。
<相続税の総額を算出方法>
【具体例で説明】
計算ロジックを見てもいまいちピンとこないですよね。
具体的な例を計算しながら見てもらった方がわかりやすいかと思います。
<仮定> 夫が亡くなり、法定相続人は妻と子供2人
相続遺産 : 8,000万円
基礎控除額 : 3,000万円 + 600万円 ✖️ 3人 = 4,800万円
法定相続割合 : 妻:1/2 子供:1/4 ✖️ 2人
課税遺産総額計算: 相続額(8,000万円)ー 基礎控除額(4,800万円)= 3,200万円
妻:相続税額 : 3,200万円 ✖️ 1/2 = 1,600万円
1,600万円の税率(上記表参照)✖️ 15%ー控除額(50万円)= 190万円
子供1人 : 3,200万円 ✖️ 1/4 = 800万円
800万円の税率(上記表参照)✖️ 10% = 80万円
相続税総額 : 190万円 + 80万円 + 80万円 = 350万円
一括して相続税総額(350万円)を税務署に支払いが必要
実際の遺産割合に応じて相続税総額に遺産相続割合を相続税総額に乗じて相続税を各人が負担
【相続する不動産】の評価減の内容
相続する資産が現金や上場株式等評価が簡単なものだけではありません。
絵画や骨董品、非上場株式等がある場合は税理士に相談が必要ですので、今回は詳細を省きます。
ここでは相続する資産に「不動産」(土地・建物)がある場合について説明します。
一般的な不動産を相続し、その不動産(土地・建物)に相続人が住み続ける場合、その面積やたの条件を具備すれば、その不動産の評価額を80%減少(つまり、評価額の20%)させることができます。
主な条件は下記になります。
●小規模宅地等の評価減の特例の上限面積と減額割合
利用区分 | 上限面積 | 減額割合 |
---|---|---|
① 特定居住用宅地等 (自宅の土地等) | 330m2 | 80% |
② 特定事業用宅地等 (事業用の土地等) | 400m2 | 80% |
③ 貸付事業用宅地等 (賃貸住宅の土地等) | 200m2 | 50% |
●特定居住用宅地等の主な要件
相続人 | 要件等 | |
---|---|---|
配偶者が相続する場合 | なし | |
同居している親族が相続する場合 例:同居している子ども | ・相続開始の時から相続税の申告期限まで、その自宅に居住し、その宅地を所有していること。 ・二世帯住宅でも適用可能 (完全分離型でも可、ただし区分登記の場合は一戸分のみ可)。 | |
同居していない親族が相続する場合 例:別居している子ども | 以下の場合は適用外 ・相続開始前3年以内に、自己または自己の配偶者、3親等内の親族等が所有する家に居住したことがある場合。 ・相続開始時に住んでいた家屋を過去に所有していたことがある場合。 |
【相続税】配偶者の相続税は1.6億円まで、または法定相続分は非課税
配偶者にかかる相続税は、配偶者の税額軽減(配偶者控除)という制度が利用できます。
一定の条件を満たすことで、配偶者が受け取る相続財産の金額が1億6,000万円、または配偶者の法定相続分のいずれかの多い方の金額までは、相続税がかかりません。
例えば、5億円の遺産があり相続人の方が配偶者お1人の場合、配偶者の法定相続分は100%です。相続財産の5億円をすべて引き継いでも、配偶者の方に相続税はかからないという事になります。
【配偶者の税額軽減】
下記のいずれか多い方の金額まで相続税は非課税になります。
①配偶者が引き継ぐ財産が1億6千万円を超えない
②相続財産が1億6千万円以上ある場合の配偶者の法定相続分
生命保険の非課税枠の使い方
生命保険金にも相続税の非課税枠があります。法定相続人1人あたり500万円になります。
例えば、法定相続人が3人(妻・子供2人等)の場合、500万円 ✖️ 3人 = 1,500万円<非課税枠>になります。
生命保険金は即現金にて入金されるものですので、葬儀等の資金や相続税の支払い時に活用できます。そういった資金として、生命保険加入と相続税の非課税枠を上手に利用することも選択肢の1つになります。
【相続税】対策について
相続税の計算ロジックでの非課税枠や不動産の評価減、配偶者の優遇制度等を見てもらいますと、相続税が発生する場合は限られてくるかと思われます。
相続税対策と聞きますと、相続税が発生した場合の節税対策を想定される方が多かと思いますが、冒頭でもお話したように、実際に相続税を支払う方は全体の8.8%です。相続税対策・節税対策を心配しなくてはいけない方は全体の1割未満の方です。
本当の意味での相続対策は、亡くなられる方がどういう生き方をしていきたいか、残された家族がどう暮らしていきたいか、遺産をどう相続していくかを話し合っていくことに重点を置くべきかと思います。
とかく子供達は親はいつまでも元気だと思いがち(思いたい)になります。しかし、思った以上に親は歳を重ねていきます。親が元気なうち、しっかりしている時に少しづつ相続(これからの生き方・死生観・遺産状況)について話し始めるのが親孝行につながると思います。
みなさん、こういった話は自然に・力まず、しかし、逃げずに・面倒くさらずされていってはいかがでしょうか。親孝行の話をしたいと言えば、少しは話しやすくなるかと思います。