相続税の【配偶者優遇制度 1億6千万円】はどのようなもの?

ふあんさん
ふあんさん

父が亡くなって母が資産のほとんどを相続した場合、相続税はほぼかからないと聞きました。
上限金額とか手続きとか、何かデメリットはないのかな?
今のうちにしておくおことはあるのかな?

仮にお父様がお亡くなりになり、ご自宅をお母様がお一人で住み続けたとした場合、
「相続税がどれほどかかるのか、かからないのか」
「かかった場合、相続税をどう工面するか」
「お母様の生活費をどうしていくか」        等々、悩みますよね。

しかし、残された配偶者には国から優遇された優しい制度があります。
それが、【配偶者の相続税額軽減制度】になります。

制度の内容や手続手法・期限・気をつける点について解説していきます。

【結論】配偶者が相続した場合、通常は相続税は掛かりません。
    しかし、手続と期限に気をつけて。

配偶者の相続税優遇は「相続資産1億6千万円」か「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか高い金額まで相続税が掛かりません。

掛からないからといって手続不要ではなく、税務署への手続と期限」があります。
「遺産分割協議書」も必要になりますので、「相続される方全員の合意も必要になる点」「二次相続の問題」も考え、事前に話し合いをしておく方がいいかと思います。

配偶者の相続税優遇制度はぜひ知っておきたい制度です。手続に必要な書類と期限、大きなデメリットではないのですが、気をつけておくべき点について説明します。

【相続税の配偶者軽減制度】どういったものか

  • 亡くなった方(被相続人)の配偶者に対する相続税の負担を軽減する制度で、法律上の配偶者のみ対象となります。
  • 相続額が「1億6千万円」か「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額まで課税されない
  • 税務署に相続税の申告書を提出(期限:亡くなったことを知った日から10ヶ月以内
  • 相続人全員合意のもと、遺産分割が確定している

「配偶者の法定相続分相当額」の計算は方法は?

法定相続分の割合(一例)

①配偶者と子どもが相続人である場合配偶者1/2 子ども1/2(2人以上の時は全員で分割)
②配偶者と親が相続人である場合配偶者2/3 親1/3(2人以上の時は全員で分割)
③配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合配偶者3/4 兄弟姉妹1/4(2人以上の時は全員で分割)

仮に3億円(ちょっと羨ましいですね)の相続資産があった場合
①の場合:1億5千万円(3億円×1/2)
②の場合:2億円(3億円×2/3)
③の場合:2億2千5百万円(3/4)

①の場合は1億6千万円まで。②③は上記の金額まで相続税が優遇されることになります。
普通のご家庭であれば、配偶者の法定相続分相当額は1億6千万円までに収まると思います。

【相続税の配偶者優遇制度】の手続方法

相続関係の書面手続は、亡くなられた方(被相続人)の住所の税務署に提出します。
手続は税務署に確認されるのが一番確実ですし、税務署にて丁寧に教えてもいただけます。
https://www.nta.go.jp/about/organization/access/chizu.htm
(税務署検索サイト)

  • 相続税申告書
    https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/r04.htm
    (国税庁HPにもありますが、税務署で確認された方が確実です)
  • 遺産分割協議書の写し or 遺言書の写し
  • 亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの履歴がわかる戸籍謄本
  • 法定相続人全員の印鑑証明書

申請期限:亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内
10ヶ月というと長く感じられますが、葬儀の後に相続される資産を計算、その後の遺産分割協議等の時間も考えなければなりません。亡くなった方の謄本を出生地の役所に申請するのに時間を要したり、遺産分割協議で相続人全員の了承と捺印・印鑑証明書入手に手間取ったりと思ったより時間を要す時もあります。早め早めの準備をしておくことが無難かと思います。

【相続税の配偶者優遇制度】の注意点は

仮にお父様が亡くなり、相続の大半をお母様が相続。相続税の配偶者優遇制度を利用し、相続税がゼロとします。半年後、お母様が亡くなり子供2人がお母様の遺産を均等に相続したとします。

この場合、相続税の配偶者優遇制度はありません。基礎控除も少なくなりますので、子供2人が支払う相続税が多額になる可能性もあります。これを「二次相続問題」と呼んでいます。しかし、お母様もすぐに亡くなるとは想定もできませんし、二次相続問題に頭を巡らすのもちょっと筋がわるい悩みかなと思います。あまり悩む問題ではないかと思います。

【相続】については親御さんが元気な時から気にかけて話していく

お父様、お母様両方がお元気なうちから、相続や老後の生き方、墓場のことについてお話しされることがいいかと思います。
相続の配偶者優遇制度もありますので、相応に資産や年金があれば、残された配偶者の方は普通に暮らせていけます。これは相続税の優遇だけでなく、厚生年金の遺族年金(無税)や収入が減れば住民税の免除があったり、高額療養費制度であったり、介護保険制度であったりと日本はいろいろな生活の配慮がなされています。

ちょっと乱暴な言い方をしますと、普通の生活をしていくのであれば老後の心配は必要ないと思います。それよりも、残された人たちが困らないよう日頃からよくコミュニケーションをとっておく方が非常に重要かと思います。
上部記事でも触れましたが、資産分割は相続人全員の了承が必要になります。ここで揉めては、亡くなられた方が悲しみますよね。あるデータでは、相続税を実際に支払う方の割合は2020年度で8.8%です。(生命保険文化センター調べ https://www.jili.or.jp/lifeplan/houseeconomy/index.html)
10人中9人の方は相続税を支払っていません。つまり、大多数の方は基礎控除内で相続され、相続税とは無縁です。

相続税の心配よりも親御さんの老後の生き方、葬儀・墓場のこと、残された家族の在り方等について話し合ってはいかがでしょうか。亡くなった後のお金の話は、おまけの話でいいかもしれません。

この記事を書いた人

fp.yamagishi

金融機関に勤務しながら、副業でファイナンシャル・プランナーをしています。大学卒業後に金融機関に勤め、10年勤務した後、同業に転職。
25年以上の金融機関勤務経験を活かし、皆さんの資産運用・お金の問題を支援できましたらと考えています。

【資格】
・ファイナンシャルプランナー(CFP)
・FP技能検定1級取得
・貸金業取扱主任者