空き家対策特別措置法改正案で管理徹底を強化
相続した実家をそのままにしておくことが多いと聞くけれど、駅から遠いので賃貸にも利用しずらいし、自分で住む選択もない。思い出も残っているし、固定資産税や都市計画税等も優遇
あるからそれほどの金額ではないので、そのままにしておこうかなと思ってしまう。
でも、最近空き家が問題になっているので、政府も法律改正し管理を強化していくと聞きました。どのような改正で、今後どうしていけばいいのかな。
空き家率(空き家数÷総家屋数)は、それほど増加をしていないものの、空き家の実数は年々増え続けており、今後もさらなる増加が見込まれています。 5年ごとに調査が行われている総務省「住宅・土地統計」によれば、 1988年の空き家は 182万戸 2018年(最新)調査では 349万戸 2030年の見込みでは 470万戸 になるとされています。 2015年に施行された「空き家対策特措法」により、居住目的のない空き家において、放置を続ければ倒壊などの危険性が高く、かつ周囲に悪影響を及ぼすような空き家は「特定空き家」に指定されることになりました。「特定空き家」は、さらに放置すると助言・指導、勧告などが行われたり、最終的には、取り壊しとなる行政代執行が行われる可能性もあります。 しかし、こうした法律が施行されたあとも空き家は増え続けています。現行の「空き家対策特措法」は、すでに倒壊の危険があるような「特定空き家」に認定された物件への対応が主となっているため、行政も対応に苦慮していました。 加えて、特定空き家の除却のさらなる促進に加え、周囲に悪影響を及ぼす前段階での有効活用や適切な管理を強化する必要性が求められるなか、今回の改正となり、「管理不全空き家」というカテゴリーも新設され、適切な管理を促しています。 国土交通省:https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000160.html
【結論】
・相続した空き家は、管理をしないと税負担が増加
・適切な管理を継続的に(庭の除草や樹木の剪定も)
・売却もしにくくなるので、解体・撤去も視野に
親から相続した実家は、思い出もあるしなかなか手放せない。でも、最寄りの駅から30分以上もかかり、賃貸の見通しもない。ずるずるとそのままにしてしまう。しかし、法改正で空き家対策が強化され、税負担は重くなるし、強制的に取り壊さなくてはならない可能性もあります。
法改正の中身とこれから何を注意しなければならないか、考えていきましょう。
京都市のように空き家対策の条例を導入する自治体もあります。各自治体に確認も必要ですね。
改正のポイント(1)管理不全空き家の新設
今回の改正で最も大きなポイントは、状態は悪くないが1年程度住んで(使われて)いない「空き家」と、状態が悪く周囲に悪影響を及ぼすような「特定空き家」の間の空き家として、「管理不全空き家」というカテゴリーを設けたことです。
現状はひどく状態が悪化していないが今後放置すれば「特定空き家」となり得るような空き家を「管理不全空き家」として指定することになりました。これまで「特定空き家」になるまで対応しにくかった、行政による改善の指導・勧告が行えるようになります。
改正のポイント(2)管理不全空き家は固定資産税の減免解除
勧告を受けた「管理不全空き家」は、固定生産税が1/6に減額される住宅用地特例が解除されます。
市街化区域でかかる都市計画税も同じく1/3に減額される特例が解除されます。実際の金額は様々ですが、現状の4倍程度になるケースが多いとみられています。
相続として親が住んでいた家を引き継ぎ、その家に住まず空き家となっているような状況で、相続人(例えば子ども)がその土地を保有しながら減税措置を受け続けるために、家をそのまま放置するようなケースが散見されていました。このように「減税処置を受けるために放置された空き家」が、その後「特定空き家」となってしまうわけです。そこで、今回の改正では、住宅の状態が悪化する前の段階からこうした措置を厳格化することで「空き家管理の確保」を図り、周辺住民の住環境を維持しようというわけです。
改正のポイント(3)所有者の責務強化
「空き家」の管理は、いうまでもなく所有者が適切に行うべきことですが、現行法の「適切な管理」に対する努力義務に加えて、「国・自治体の施策に協力する」という努力義務が追加されました。空き家に係る国や地方自治体の施策に対して、「聞く耳をもたない」ではなく、「適切に対応してください」ということです。
改正のポイント(4)空き家の活用拡大
市区町村が、中心市街地や地域の再生拠点、観光振興地区などの「空き家等活用促進地域」の指定権限を持つことになり、また、同地域の指定や空き家等活用促進指針を定め、用途変更や建て替えなどを促進できるように、接道規制や用途規制の合理化を図ることができるようになります。
加えて、市区町村長は、区域内の空き家等所有者らに対して、指針に沿った活用を要請することができるようになります。
空き家等の管理・活用に取り組むNPOや社団法人などの団体を、市区町村長は「空き家等管理活用支援法人」に指定できるようになります。空き家対策は地域促進につながることから、地方自治体への権限移譲が図られます。
改正のポイント(5)特定空き家の除却などの円滑化
市区町村長に「特定空き家」に関する報告徴収権が与えられます。これにより資料の提出などを求めることができ、勧告等が円滑に行われるようにします。
除却などの代執行が円滑に進むように、
① 命令等の事前手続を経る時間がない緊急時の代執行制度を創設され、
② 所有者不明時の代執行、緊急代執行の費用は、確定判決なしで徴収できるようになります。
このように空き家対策は各地方自治体を中心に進められていきます。誰も住んでいない遠くの実家、そのままにしておくと思わぬ出費や勧告を受けることになるかもしれません。