新聞やSNSで「財政検証」というものが行われたと見ました。聞きなれない「財政検証」ってどういったものなのでしょうか。また、これによって年金制度が何か変わるものがあるのでしょうか。
やまぎし
「財政検証」あまり聞いたことがないですよね。何か難しいそうな言葉ですし、5年に1回ではそもそも耳にする機会も少ないですし。。。ただ、私たちの年金制度を決めていく大事なものですので、この機会に「財政検証」が何なのか、果たして年金はどうなっていくのか、確認してみたいと思います。
「財政検証」とは、ざっくり解説
「財政検証」の年金制度の「健康診断」です。
年金制度には、少子高齢化に伴う年金加入者の減少や平均寿命の延びなど、社会の人口・経済全体の状況によって、給付と負担のバランスを自動的に調整する仕組みがあります。
このバランスがとれているかどうか確認するため、5年ごとに人口や経済の状況から厚生労働省が将来のお金のバランスを検査しています。
これを「財政検証」といいます。
厚生労働省もマンガで紹介資料を作成していますので、参考までに。
2024年の年金の診断結果は?
「所得代替率」という言葉が大事なります。これは、年金額がその時の現役世代の所得の何%にあたるかを表した割合です。
2024年度の「所得代替率」61.2%で現役世代平均収入:月額37万円との仮定で、モデル世帯年金額:月額22万6000円になります。
これが将来、過去30年を投影した計算(下記図表参照)によると2029年度「所得代替率」が60.1%、2057年度「所得代替率」が50.1%と予想されています。
イメージを持ってもらうために、今の世帯平均収入で算出するとモデル世帯年金額は2029年度:22万2000円、2057年度:18万5000円になります。(モデル世帯:会社員の夫と専業主婦世帯)
(参照:厚生労働省 財政検証)
経済成長率の変化に伴う所得代換率とモデル年金額の変化
今の年金制度は、将来に備えて、給付水準を物価や賃金の上昇率よりも低く抑える「マクロ経済スライド」が導入されています。
現役世代の平均収入を100%として、夫婦2人のモデル世帯が受け取る年金額の割合=「所得代替率」は、50%を下回らないようにすることが法律で約束されています。
(参照:NHK)
厚生年金の適用拡大で年金財政を健全化へ
パートなどで働く短時間労働者の厚生年金への加入は、
・従業員が101人以上の企業で、
・週20時間以上働き、
・月額8万8000円以上の賃金を受け取っている
以上のことが要件となっていますが、ことし10月からは企業規模の要件がさらに緩和され、
・51人以上の企業で働く人も対象となります。
<企業規模要件などを撤廃した場合>
短時間労働者の企業規模の要件を撤廃するとともに、5人以上の従業員がいる個人事業所のうち、フルタイムでも厚生年金が適用されない飲食業や理容・美容業なども適用の対象とした場合の影響も提示されました。
この場合、90万人が新たに厚生年金に加入することになり、
・長期の実質経済成長率が1.1%のケースでは、2035年度に給付抑制が終わり、「モデル年金」の所得代替率が1ポイント改善し、58.6%に
・成長率がマイナス0.1%のケースでは2054年度に給付抑制が終わり、所得代替率は0.9ポイント改善し、51.3%に
<週10時間以上働く人が加入したら>
企業などで週10時間以上働く人すべてを厚生年金の適用対象とした場合には、新たに860万人が厚生年金に加入することになり、
・成長率が1.1%のケースでは給付抑制が来年度以降、必要なくなり、所得代替率は今年度と同じ61.2%で維持
・マイナス0.1%のケースでは 給付の抑制期間が19年短縮され、2038年度時点の所得代替率が56.3%と5.9ポイント改善
まとめ
経済成長が鈍化したとしても年金がもらえなくなるリスクは少ないと試算されています。しかし、実際にもらえる金額は所得代換率をみますと確実に減ってきています。現在年金給付を受けている親世代や先輩世代と比較するともらえる年金の額は減額されると想定できます。
現在のモデル世帯の年金額は夫婦2人で月額22万6000円ですから、暮らしていけない金額ではありません。しかし、暮らしていけることゆとりのある老後生活との開きはあるかと思います。
財政検証にも記載ありますが、これからはできるだけ長く働き、それなりの収入・給与を確保していくことが必要になるかと思います。
年金だけに頼らず、健康資産を積みできる限り長く働ける体作りをしていくこと、それほど働かなくても大丈夫な金融資産を持っておくことが必要です。私なりに考える豊かな老後では現在の価格水準で月額30〜40万円が必要かと思います。そうしますと、月10〜20万円稼げる仕事をしていくか、配当や切り崩しできる金融資産を築いていかなければなりません。金融資産では5000万円〜7000万円程度でしょうか。
どちらにせよ、体が動ける時期から健康資産と金融資産への準備をしていくことが必須であると思います。