日本銀行がゼロ金利を解除するというニュースを聞きました。金利がこれから上昇していく流れかと思いますが、金利が上昇すると株価にどんな影響があるのでしょうか
なかなか難しい質問ですね。株価はいろいろな情勢で変化していきますが、大きな条件は企業の業績と金利で株価は左右されます。今回は金利の変化と株価についてまとめてみたいと思います。ちょっと専門的な話になります。
日本銀行が行う金利は何の金利?
今回話題になっている日本銀行が金利を上げたと言っている金利とは、政策金利のことです。この政策金利とは、日本銀行が一般の銀行に貸し付ける際の金利のことです。景気が悪いときは金利を下げて個人消費や設備投資を促し、景気を回復させます。景気が良いときは金利を上げて過度な景気上昇を抑えます。今回、景気が良くなってきたと判断し、金利をマイナス0.1%から0.1%0.2ポイント上昇させました。
この政策金利を上げると銀行が企業や個人に貸し出す金利も上げる動きになってきます。借入をしようとしている方には良くないニュースだけど景気が上がってきているとの判断になるため、政策金利が上げたのはプラスに受け止められています。
日銀の金利が上がると全ての金利に影響が及びます
金利が上昇すると、金融機関は、以前より高い金利で資金調達しなければならず、企業や個人への貸出においても、金利を引き上げるようになります。身近な住宅ローンの金利水準では変動金利で一部下がっているものもありますが、長期の金利は上がり基調になっています。
<参照:Yahoo!ニュース>
金利が上がると国債の金利も上がる
金利が上がると国の借金である国債の金利も上昇します。銀行の預金金利が上昇していくのと同じ感じです。
金利と株価との比較
金利が上昇すると一般的には企業の業績が悪化し、株価が下がると言われています。
益回りという指標
PERという指標は聞いたことがある方は多いかと思いますが、PERとは株価を1株当たりの利益(EPS)で割ったものですが、
PERの分子と分母を逆にしたものが、益回りの指標になります。
PERは数字が低い方が割安の目安ですが、益回りは数字が高いほど割安の目安になります。
具体的にPERと益回りを見てみましょう
今注目の東京エレクトロンで算出しています。
2024年5月10日 株価:35,000円 EPS:731.4円 PER:47.9倍
益回り:2.09%
トヨタ自動車
2024年5月10日 株価:3,528円 EPS:333.9円 PER:10.6倍
益回り:9.46%
国債(無リスク資産)との利回り比較
実は益回りの指標は株価指標の目安であるのですが、債券の利率との比較でも使用できます。
東京エレクトロンやトヨタ自動車の現在の益回りは2.09%、9.46%ですので、国債よりも高い利回りが見込めます。その分株価の下落のリスクはあります。国債の利回りは下記表になります。
高すぎるPER企業はどうなる?
ここで、バブル期のように株価が上がっていき、PERが70倍、80倍と上げっていくと、益回りは1.43%、1.25%と低くなってきます。
一方、金利が上がっていくと国債の利回りも上がっていきます。
米国の国債の水準を見ればわかるのですが、金利が上がっていくと相応の債券の利回りが約束されます。
つまり、高すぎるPER企業の株式よりも無リスク資産である国債を購入した方がリスク・リターンを考えた場合、理にかなっているのです。
結論
金利上昇時には、高すぎるPERの株式はEPSのさらなる拡大が見込めない場合、リスク・リターンを考慮すると国債に劣る資産と見られます。機関投資家からは魅力のある投資先とは見られず、株式を売られる可能性がある。
EPSのさらなる拡大を見込める企業は限られ、予想することも困難である。そのため、一般的な水準であるPER16倍程度よりかなり上回る企業は、金利上昇時には機関投資家から株式を売却される可能性があり、ひいては株価の下落に通じます。
金利が上昇傾向にある時に株式を購入する場合、一つの目安としてこの益回り・PERの指標を参考にしてもらえたらと思います。