出産から育児への補助支援制度 ざっくり解説

お客様

出産や育児への国や自治体の支援が拡充されていると聞きました。
どのようなものがあって、どう取得していけばいいでしょうか。

FP
やまぎし

こども家庭庁も作って国も子育て支援事業に本腰をあげています。ただわかりにくいことも多くあり、どこまで必要な方々に浸透しているかと思います。国と自治体でこどもに関する支援策は多くあるのですが、今回は出産から育児に絞って代表的な支援策についてお話ししていきます。

まずは4つの支援の概要を

1 出産育児一時金は50万円に増額に

(参照:公明党HP)

出産育児一時金は出産された時に病院等にかかる費用を負担するものです。病院か健康保険組合にお問い合わせいただければ申請用紙や申請方法を教えていただけます。

出産一時金の支給を受ける要件としては、健康保険の被保険者または被扶養者が妊娠4か月(85日)以上で出産をしたこととなっており、早産、死産、流産、人工妊娠中絶(経済的理由によるものも含む)も支給対象になっています。

2 出産・子育て応援交付金は自治体によって違います

(参照:公明党HP *子育て支援は公明党のHPがわかりやすいので、参照しています)

出産・子育て応援交付金事業は自治体が窓口になっています。多くは面談が必要になってきますので、妊娠後にどのタイミングでどこに行けばいいのかを確認してみて下さい。
5万円の現金か商品券等を出産前と出産後の2回、合計10万円相当の支援があり、育児期も子育てギフト等の支援も継続します。

3 出産手当金は会社員のママのみ

(参照:豊島健康保険組合HP)

出産手当金は会社員のママが出産で会社を休んでいる際に給与の2/3を98日間、保険組合から支給される仕組みです。
もし、出産日が予定日より遅れた場合は遅れた日も加算されて支給されます。

申請方法と支給額は働いる会社の保険組合に問い合わせて下さい。
金額のイメージを下記に載せておきましたので、参考にして下さい。

<月額30万円の方の場合>

(参照:三井住友カードHP)

出産手当金で気をつけておくこと

出産手当金の支給を受けるためには会社員であることが必須です。そのため、出産前に会社を辞めてしまっては出産手当金は支給されません。出産後も働く可能性があるとして、産休前に辞職せずに出産・育児後に会社を辞める辞めないの判断をして下さい。
これは育児休業給付金にも絡んできます。

出産手当金には社会保険料と所得税・住民税はかかりません。給与の2/3では少ないのではと感じますが、手取りでは8割程度は確保できます。
ただ、住民税は前年の所得に課税されますので、前年分の住民税はかかります。昨年の源泉徴収票から住民税を確認し、その分の確保が必要なことを忘れないようにしておいて下さい。ただ、減免措置や徴収猶予の措置がありますので、要件や申請方法についてお住いの自治体の窓口に相談してみて下さい。

受取年金への影響は?

 産休・育休により社会保険料を免除された場合、将来受け取れる年金額に影響があるのでは?と不安になる方もいるかもしれません。しかし、免除されている期間も納付記録が残るため、将来受け取れる年金が減額されることはありません

 また、免除期間中も被保険者資格は失効しないため、安心して子育てに専念できます

4 育児休業給付金

(参照:ママワークス)

育児休業給付金とは、雇用保険に加入されている方(会社員等)が、1歳(パパママ育休プラス制度を利用して育児休業を取得する場合は1歳2ヵ月。保育所における保育の実施が行われない等の場合は1歳6ヵ月または2歳)に満たない子を養育するための育児休業を取得し、育児休業期間中の賃金が休業開始時の賃金と比べて 80%未満に低下したなど、一定の要件を満たした場合に支給されます。申請手続きは、原則、会社がハローワークへ行います。

受給するためには、雇用保険に一定期間加入していることが必要で、派遣社員やパートタイマーの方でも雇用保険に加入していれば受給することができます。また、女性だけでなく、男性も受給可能となっています。

受給資格

  1. 1歳未満の子を養育するために、「育児休業」を取得した被保険者であること。
    ここでいう「育児休業」とは、職場復帰を前提に取得するものをいい、休業取得時に退職が確定(予定)している休業は支給の対象となりません。
  2. 育児休業を開始した日の前2年間に、雇用保険に12ヵ月以上加入(1ヵ月の出勤日数は11日以上)していること。

なお、育児休業を開始した日の前2年間に、賃金支払基礎日数が 11 日以上の月が 12ヵ月ない場合は、賃金の支払の基礎となった時間数が 80 時間以上の月を1ヵ月として取り扱われます。不明な点は会社に確認してみるといいかと思います。

1ヵ月当たりの支給額

  • 育児休業開始から180日:[休業開始時賃金日額×支給日数(通常は30日)]×67%
  • 育児休業開始から181日目以降:[休業開始時賃金日額×支給日数(通常は30日)]×50%

この「休業開始時賃金日額」は、育休開始前の6ヵ月の給料を180で割った金額です。また、支給額には上限および下限があることにも注意が必要です。この上限額および下限額については毎年8月1日に改訂され、2023年8月1日現在の上限額は以下のとおりとなっています。

支給上限額 : 180日まで <支給率67%>  310,143円
        181日目以降<支給率50%>  231,450円

企業によっては休業中の給与が出るところも

産前産後休暇は労働基準法で、育児休暇は育児・介護休業法にて認められた制度です。そして産前産後休暇及び育児休暇中の給与について、休業した期間分は日割りで算定対象期間から控除することなど、休業期間は働かなかったものとして取り扱うことは、不利益な取扱いに該当しないとされています。

したがって、休暇取得中の給与についてどのように扱うかは会社側の判断に委ねられており、その内容については就業規則に盛り込むこととなっています。一般的には休業中の給与については無給としている企業が多いですが、最近では休業中の給与を100%保障する企業も出始めています。

給付額のイメージ

<給与月額30万円の方の場合>

(参照:三井住友カードHP)

育児休業取得のイメージ

ママとパパでどうのように育児休業を取得していったら良いのか簡単なイメージ例を記載しました。育児休業は仕事の状況やママの状況によってパパの取得時期を決める等フレキシブルに設定できます。

(参照:楽天保険HP)

パパの育休取得時期について

育休取得時は社会保険料が免除されます。社会保険料は月末最終日に育児休業を取得するとその月は免除されます。また、月に14日間以上の育児休業を取得でも免除されます。社会保険料は企業側も免除されますので、社会保険料の削減は企業側にもメリットがあります。いつから取得するのがいいのか、企業の社会保険料を管轄する部署(総務部・人事部等)に確認してみるのもいいかと思います。
ちなみに、産休・育児休業中の社会保険料は払ったものとみなされますので、年金が減額される等のデメリットはありません

また、パパの産後育休開始時期はママの育休開始より後に取得する必要があります。もし、パパの育児休業をママの産休中に育児休暇を開始し、続けて育児休業を取得したい場合は、ママが育児休業を取得する時にパパは一旦有給休暇を挟んで再度育児休業を取得しなければなりません。

パパの育休取得時期は比較的フレキシブルに設定できるかと思います。ママが産休後の体調や育児で大変な時に一緒に育休を取得し、ママが復職してまもない頃に再度取得し、ママのサポートするというプランもいいかと思います。パパは早めにママと会社と育児休業取得時期を相談しておくことがいいですね。

そのほかの制度

①妊婦健診費用助成

妊婦健診の助成として平均7〜10万円、自治体から助成があります。自治体によって金額・申請方法が変わってきますので、自治体への確認が必要になります。

②産前産後期間の国民年金保険料が免除

会社員の方は社会保険料(厚生年金等)が免除になりますが、個人事業主等の国民年金第1号被保険者の方も出産(予定)日の前月から4ヶ月間の国民年金保険料が免除されます

③児童手当

(参照:読売新聞)

まとめ

出産・育児に関して、国・自治体・企業の支援も充実してきています。制度を理解することで、出産・育児に関するお金や生活の不安も少しは解消されるかもしれません。制度を上手に利用していただき、不安を少しでも和らげていただければ嬉しく思います。

参照したHPも掲載いたします。より詳しい内容を知りたい方はこちらも参照いただければと思います。

この記事を書いた人

fp.yamagishi

金融機関に勤務しながら、副業でファイナンシャル・プランナーをしています。大学卒業後に金融機関に勤め、10年勤務した後、同業に転職。
25年以上の金融機関勤務経験を活かし、皆さんの資産運用・お金の問題を支援できましたらと考えています。

【資格】
・ファイナンシャルプランナー(CFP)
・FP技能検定1級取得
・貸金業取扱主任者