65歳からの医療保険料と病院等の医療費——平均寿命までいくらかかる?

「65歳になったら健康保険はどうなるの?」「75歳になると何が変わるの?」——FP面談でとても質問の多いテーマです。この記事では、65歳以降の医療保険の仕組み、実際にかかる医療費の目安、高額療養費制度、そして資産収入が保険料に与える影響まで、10分程度で読める形にまとめました。

65歳から医療保険はどう変わるか

会社員として働いていた方は、退職のタイミングで加入する医療保険が変わります。主な選択肢は次の3つです。

  • 国民健康保険(国保):自営業者や退職後に多くの方が加入する制度。市区町村が運営
  • 健康保険の任意継続(任継):退職後も最長2年間、在職時の健康保険を継続できる制度
  • 家族の被扶養者になる:配偶者や子どもが会社員で、その健康保険の扶養に入れる場合

65〜74歳は「前期高齢者」と呼ばれ、上記いずれかの制度に加入し続けます。後期高齢者医療制度に移るのは、原則として75歳になってからです(一定の障害がある場合は65歳から後期高齢者医療制度に移行できる特例もあります)。

国民健康保険料の仕組みと目安

国民健康保険料は、大きく分けて次の要素で計算されます。

  • 所得割:前年の所得に応じて決まる部分
  • 均等割:加入者1人あたり定額でかかる部分
  • 平等割:1世帯あたり定額でかかる部分(自治体によっては設定なし)

保険料率・金額は市区町村ごとに異なります。同じ所得でも住んでいる自治体によって保険料が変わるため、正確な金額は「お住まいの市区町村名+国民健康保険料 試算」などで検索するか、自治体の窓口・ウェブサイトの保険料シミュレーターで確認するのが確実です。目安として、年金収入や給与収入が年200万円前後の単身世帯であれば、年間十数万円程度になるケースが多く見られますが、資産所得の有無や自治体の料率によって大きく変動します。

なお、国民健康保険料には上限額(賦課限度額)が設定されており、高所得の方でも際限なく保険料が上がり続けるわけではありません。2026年度(令和8年度)からは、医療分67万円・後期高齢者支援金分26万円・介護分17万円に加え、新設される「子ども・子育て支援納付金分」3万円が加わり、合計113万円まで引き上げられる予定です。上限額は年々見直される傾向にあるため、最新の金額は自治体の情報でご確認ください。

実際に病院にかかったときの医療費はどのくらい?

医療費の自己負担割合は、年齢と所得によって次のように区分されています。

年齢区分自己負担割合(原則)備考
70歳未満3割
70〜74歳2割現役並み所得者は3割
75歳以上1割一定以上所得のある方は2割、現役並み所得者は3割(2022年10月改正)

この負担割合を踏まえ、年齢階級別の一人当たり医療費(保険適用分の総額、目安)と、実際の自己負担額のイメージを表にまとめました。数値は概算です。実際の金額は個人の健康状態や受診頻度により大きく異なりますので、あくまで目安としてご覧ください。

年齢層一人当たり年間医療費(総額の目安)自己負担割合自己負担額の目安(年間)
65〜70歳約40万〜50万円2〜3割約10万〜15万円
70〜75歳約55万〜65万円2割(現役並みは3割)約11万〜13万円
75〜80歳約75万〜85万円1割(一定以上所得は2割)約8万〜17万円
80〜85歳約90万〜100万円1割(一定以上所得は2割)約9万〜20万円
85歳以上約100万〜120万円1割(一定以上所得は2割)約10万〜24万円

年齢が上がるほど医療費の総額は増えていく一方、75歳以降は自己負担割合が下がる方が多いため、単純に「歳を取るほど自己負担が増える」わけではない点がポイントです。ただし、入院や手術が必要になった場合はこの限りではなく、次に説明する高額療養費制度が重要な役割を果たします。

高額療養費制度——自己負担には上限がある

医療費が高額になった場合、家計を守る仕組みが「高額療養費制度」です。1か月(同一月)にかかった医療費の自己負担額が、所得区分ごとに定められた上限額を超えた場合、その超えた分が払い戻されます(入院時は「限度額適用認定証」を提示すれば、窓口での支払い自体を上限額までに抑えることも可能です)。

上限額は年齢(69歳以下/70歳以上)と所得水準によって細かく区分されており、高所得の方ほど上限額も高く設定されています。一般的な所得水準(住民税課税世帯、現役並み所得未満)の方であれば、月々の自己負担上限はおおむね5万〜6万円程度、住民税非課税世帯であればさらに低い水準に抑えられます。

高額療養費制度は近年、見直しの議論が続いているテーマです。政府は2025年8月からの自己負担限度額引き上げを検討していましたが、患者団体からの強い反対を受け、2025年3月にいったん実施が見送られました。その後改めて議論が重ねられ、2026年8月から第1段階、2027年8月から第2段階という形で、段階的に自己負担限度額を引き上げる方針が示されています。実施時期や引き上げ幅は今後変更される可能性もあるため、最新の制度内容は必ず厚生労働省や加入している医療保険者の発表でご確認ください。

75歳以上になると何が変わるか

75歳になると、それまでの国保や被用者保険から自動的に「後期高齢者医療制度」に切り替わります。主な変更点は次のとおりです。

  • 保険料の計算方法が変わる:後期高齢者医療制度独自の均等割・所得割で計算され、都道府県ごとの広域連合が運営します。保険料にも賦課限度額があり、2026年度は最大85万円程度まで引き上げられる見込みです
  • 自己負担割合は原則1割:ただし2022年10月の制度改正により、一定以上の所得がある方は2割負担、現役並み所得者は3割負担となります。2割負担の対象となるのは、同一世帯の被保険者に課税所得28万円以上の方がいて、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身で200万円以上(世帯に被保険者が2人以上の場合は合計320万円以上)というのが目安です。厚生労働省の推計では、後期高齢者の約2割(約370万人)がこの2割負担の対象とされています
  • 高額療養費の上限額も専用の区分が適用される:70歳以上の区分がベースになりますが、後期高齢者向けに細かく設定されています。なお、2割負担導入時に設けられていた「外来医療費の配慮措置(上限を抑える仕組み)」は2025年9月末で終了しています

75歳という年齢は「医療費の負担がぐっと軽くなる」タイミングであると同時に、「一定以上の所得があると2割負担に引き上げられる」分岐点でもあります。年金収入だけでなく、次に説明する資産収入の状況によって、この所得判定に影響が出る場合がある点にも注意が必要です。

年金・給与だけでなく、資産所得も保険料・医療費負担に影響する

見落とされがちですが、国民健康保険料や後期高齢者医療の保険料、高額療養費の所得区分は、年金や給与収入だけで決まるわけではありません。株式の配当金や投資信託の分配金、不動産所得なども、確定申告の方法によっては保険料算定の対象所得に含まれます。

  • 株式の配当や譲渡益を申告分離課税または確定申告不要制度で処理した場合、原則として保険料算定の対象所得には含まれません
  • 一方で、配当控除を受けるために総合課税で確定申告をすると、その所得が保険料算定に反映され、結果として保険料や自己負担割合の区分が上がってしまうケースがあります
  • 国は近年、金融所得(配当・譲渡益等)を社会保険料の負担能力判定にどう反映させるかについて、全世代型社会保障の議論の中で継続的に検討しています。将来的に、資産収入がより保険料に反映されやすくなる方向で制度が変わっていく可能性があります

退職後、給与収入がなくなり年金と資産収入(配当・取り崩し等)で生活する場合、確定申告の仕方ひとつで、翌年度の国民健康保険料や後期高齢者医療の自己負担割合が変わることがあるという点は、ぜひ知っておいていただきたいポイントです。申告方法を選ぶ際は、税金だけでなく社会保険料への影響もあわせて確認することをおすすめします。

まとめ

  • 65〜74歳は国民健康保険や任意継続などに加入し、75歳になると自動的に後期高齢者医療制度に移行する
  • 医療費の自己負担割合は、70歳未満3割、70〜74歳2割(現役並み3割)、75歳以上1割(一定以上所得2割、現役並み3割)が原則
  • 年齢が上がるほど医療費総額は増える傾向があるが、75歳以降は負担割合が下がる方が多く、単純に負担が増え続けるわけではない
  • 高額療養費制度により、1か月の自己負担には所得区分ごとの上限がある。ただし制度自体、2026年8月・2027年8月と段階的な見直しが予定されている
  • 保険料や自己負担割合は、年金・給与収入だけでなく、株式配当などの資産所得の申告方法によっても変わりうる。確定申告の方法は税金と社会保険料の両面から検討することが大切

本記事は一般的な制度説明を目的としたものであり、個別の保険料・医療費・税金の金額を保証するものではありません。特に年齢階級別の医療費の目安は概算であり、金額や制度は年度・自治体・個人の状況によって異なります。詳細は厚生労働省、お住まいの市区町村の国民健康保険担当窓口、または加入している医療保険者に必ずご確認ください。

参考にしたサイト
後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?|政府広報オンライン
高齢者医療制度|厚生労働省
高額療養費の上限額25年8月引き上げ見送り|東京保険医協会
国民健康保険料【令和8年度版】賦課限度額113万円・子ども子育て支援納付金分新設を税理士が解説

この記事を書いた人

fp.yamagishi

金融機関に勤務しながら、副業でファイナンシャル・プランナーをしています。大学卒業後に金融機関に勤め、10年勤務した後、同業に転職。
25年以上の金融機関勤務経験を活かし、皆さんの資産運用・お金の問題を支援できましたらと考えています。

【資格】
・ファイナンシャルプランナー(CFP)
・FP技能検定1級取得
・貸金業取扱主任者