エンディングノートを書いてみよう——FPが教える書き方・お金の面でのメリット・気をつけること

「エンディングノート」と聞くと、まだ先の話、と感じる方も多いかもしれません。しかし実は、書くタイミングが早いほどメリットが大きいのがエンディングノートの特徴です。この記事では、FP(ファイナンシャルプランナー)の立場から、エンディングノートを書く一般的な利点、書き方、気をつけること、そしてお金の面での具体的なメリットを、10分程度で読める形にまとめました。

エンディングノートとは何か

エンディングノートは、自分に万が一のことがあったとき、または判断能力が低下したときに備えて、家族や周囲の人へ伝えたい情報や希望を書き残しておくノートです。

決められた書式はなく、市販のノートを使っても、手持ちのノートに自由に書いても構いません。遺言書とは違い、法的な効力はありません。財産の分配方法を確実に実行させたい場合は遺言書が必要ですが、エンディングノートはそれ以外の「思い」や「情報」を自由に書き残せる点が最大の魅力です。

エンディングノートを書く一般的な利点

  • 家族の負担を減らせる:万が一のとき、家族は葬儀の手配や各種手続きに追われます。希望や必要な情報が整理されているだけで、家族の精神的・時間的負担は大きく軽減されます
  • 自分の意思を明確に残せる:医療判断(延命治療の希望など)や葬儀の形式など、法律では定めきれない「自分らしさ」を伝えられます
  • 書き直しが自由:遺言書と違って厳格な様式や手続きが不要なため、気持ちや状況の変化に合わせて何度でも書き直せます
  • 自分の人生を振り返る機会になる:書く過程で、これまでの人生や大切にしたい価値観を整理でき、残りの人生をどう過ごすかを考えるきっかけにもなります

お金の面からのメリット

FPの立場から特に強調したいのが、お金に関する情報整理そのものが持つ経済的な価値です。

  • 口座・保険・証券口座の「見えない資産」を防げる:金融機関や保険会社が分からず、相続手続きが長期化したり、最悪の場合は資産の存在自体に気づかれず時効を迎えてしまうケースがあります。口座一覧を残しておくだけで、こうしたリスクを大きく減らせます
  • 相続手続きの時間・費用を削減できる:金融機関への照会や必要書類の収集には、想像以上に時間と手数料がかかります。情報が整理されていれば、専門家(税理士・司法書士)への依頼費用も抑えられる可能性があります
  • サブスクリプションや自動引き落としの整理につながる:気づかないまま契約が残り続ける有料サービスの解約漏れを防げます
  • 保険の見直しのきっかけになる:加入している保険を書き出す過程で、保障内容の重複や不足に気づき、保険料の最適化につながることがあります
  • デジタル資産(暗号資産、ネット証券、ポイントなど)の把握漏れを防げる:紙の通帳がないデジタル資産は、家族が存在に気づけないまま消滅してしまうリスクが特に高い分野です

書き方の基本

エンディングノートに決まった正解はありませんが、一般的に含まれる項目は次の通りです。

カテゴリー記載内容の例
自分自身の情報生年月日、本籍地、血液型、既往症・かかりつけ医など
財産・お金の情報預貯金口座、証券口座、保険、不動産、負債、ID・パスワードの保管場所
医療・介護の希望延命治療の希望、介護が必要になった場合の希望(自宅・施設など)
葬儀・お墓の希望葬儀の形式、宗派、呼んでほしい人、お墓の希望
家族・友人へのメッセージ伝えたい思い、感謝の言葉
デジタル関連情報SNSアカウント、サブスク契約、スマホ・PCのパスワード方針

すべてを一度に完璧に書こうとせず、書けるところから、書ける範囲で始めるのがコツです。特にお金に関する情報(口座・保険・証券会社名)は、優先して書いておくことを強くおすすめします。

気をつけること

  • 口座番号やパスワードそのものを直接書き込まない:ノート自体を紛失・盗難された場合のリスクを考え、パスワードは「ヒントのみ記載」「別の方法で管理場所を伝える」など工夫しましょう
  • 法的な効力がないことを理解しておく:財産の分配方法を確実に実現したい場合は、別途、正式な遺言書(公正証書遺言など)を作成する必要があります
  • 保管場所を家族と共有しておく:どれだけ丁寧に書いても、家族がその存在を知らなければ意味がありません。存在自体は事前に伝えておきましょう
  • 定期的に見直す:資産状況や家族構成、希望は年月とともに変わります。年に一度など、見直すタイミングを決めておくと安心です

こんな人におすすめ

  • 50代以降で、そろそろ資産や保険を整理したいと考えている方:情報整理そのものが、家計の見直しにもつながります
  • 複数の金融機関・証券口座を持っている方:口座が多いほど、家族が把握しきれないリスクが高まります
  • 持病があり、医療・介護の希望を明確にしておきたい方:意思表示ができなくなる前に、希望を形にしておく意味があります
  • 単身世帯・おひとりさまの方:頼れる家族が近くにいない場合ほど、情報整理の価値は大きくなります
  • 子どもや家族に手間をかけたくないと考えている方:「迷惑をかけたくない」という気持ちを、実際に形にできます

こんなときに、こんな形で書いてみて

  • 人間ドックや健康診断を受けたタイミングで:健康状態を見直すついでに、医療・介護の希望欄だけでも埋めてみる
  • 年末年始の家計の棚卸しのタイミングで:口座・保険・証券会社の一覧を作るついでに、財産情報の欄を埋める
  • 子どもの独立や結婚など、家族構成が変わったタイミングで:家族へのメッセージ欄を更新する機会に
  • 定年退職や再雇用のタイミングで:働き方が変わる節目に、これまでの人生を振り返りながら少しずつ書き進める

「全部を一気に完成させる」のではなく、ライフイベントのたびに少しずつ加筆していくのが、無理なく続けるコツです。

ちょっと先の話だけど、今書くことで得られるメリット

「まだ早い」と感じる方こそ、今書くことに大きな意味があります。

  • 判断能力があるうちにしか、正確な情報は書けない:認知機能の低下や病気は、いつ誰に起きるか分かりません。元気なうちに書いておくことが、結果的に一番確実な備えになります
  • 今の家計を可視化できる:エンディングノートを書く過程は、そのまま「今の自分の資産・保険を棚卸しする作業」になります。これは終活というより、今のお金の管理そのものに直結するメリットです
  • 家族との対話のきっかけになる:早いうちから家族と情報を共有しておくことで、いざというときの混乱を防げるだけでなく、家族との会話のきっかけにもなります
  • 時間をかけてゆっくり書ける:直前になって慌てて書くよりも、時間をかけて何度も見直しながら書く方が、内容の精度も納得感も高まります

市販のエンディングノートをいくつか紹介

自分で1からノートを用意するのが難しい場合は、市販のエンディングノートを活用するのもおすすめです。代表的なものをいくつか紹介します。

商品名出版社・メーカー参考価格特徴
一番わかりやすい エンディングノートリベラル社1,188円解説付きでスムーズに書き進められる。パスワード保護用スクラッチシール付属
もしもの時に役立つノート(LES-E101)コクヨ1,228円CD-R保管用ケース付属。写真や証明書を保管できるポケット付き
もしもに備える情報ノートシナップス・ジャパン520円A5サイズでコンパクト。口座・保険・パスワードなど家族と共有したい情報を記入可能
書いて安心 エンディングノート主婦の友社1,210円預貯金から葬儀・ペットまで幅広い項目を網羅。困ったときのアドバイス付き
一番かんたん エンディングノート扶桑社850円必要な項目を厳選。自筆遺言シート・暗証番号保護シール付き

※価格は執筆時点の参考価格です。購入の際は最新の価格を各販売サイトでご確認ください。

まとめ

エンディングノートは、法的効力こそありませんが、家族の負担を減らし、自分の意思を伝え、そして何よりお金の情報を整理することで実質的な経済的メリットを生み出す、非常に実用的なツールです。「まだ早い」と感じている今だからこそ、判断能力があるうちに、書けるところから少しずつ始めてみることをおすすめします。


本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的な助言を目的とするものではありません。遺言書の作成や相続に関する具体的な相談は、税理士・司法書士・弁護士等の専門家にご相談ください。商品価格は執筆時点の情報です。

参考にしたサイト

この記事を書いた人

fp.yamagishi

金融機関に勤務しながら、副業でファイナンシャル・プランナーをしています。大学卒業後に金融機関に勤め、10年勤務した後、同業に転職。
25年以上の金融機関勤務経験を活かし、皆さんの資産運用・お金の問題を支援できましたらと考えています。

【資格】
・ファイナンシャルプランナー(CFP)
・FP技能検定1級取得
・貸金業取扱主任者