水害にあってしまったら——罹災証明書・保険申請で気をつけること、片付け前にすべきこと

千葉県では大規模な水害が発生し、各地で線状降水帯による記録的な大雨が発生しています。今やどの地域でも、水害のリスクは他人事ではありません。

もし自宅が浸水などの被害にあってしまった場合、生活再建のために必要になるのが「罹災証明書」の申請と、火災保険(水災補償)の申請です。しかし、いざというときに何から手をつければいいのか分からず、慌てて片付けを始めてしまい、あとで困るケースが少なくありません。この記事では、水害にあった際に気をつけるべきポイントを、10分程度で読める形にまとめました。

まず知っておきたい大原則:片付ける前に「記録」が最優先

浸水被害にあうと、衛生面や安全面から、すぐに片付けたくなる気持ちは自然なことです。しかし、片付けを始める前に、必ず被害状況を写真で記録することが何よりも重要です。

なぜなら、この写真がなければ「罹災証明書」を申請できず、また火災保険の申請でも被害の証拠として必要になるからです。片付けてしまってからでは、被害の程度を証明する手段がなくなってしまいます。

片付け前にすべき写真撮影のポイント

具体的には、次の3段階で撮影しておきましょう。

1. 建物の全景を4方向から撮影

建物の外観を、東西南北(もしくは前後左右)の4方向から、それぞれ遠景で撮影します。

2. 浸水した深さを記録する

メジャーなどを使って、浸水した高さを実際に測定します。撮影は次の2枚をセットで行いましょう。

  • 測定箇所全体が分かる遠景の写真
  • メジャーの目盛りがはっきり見える近景の写真

3. 被害箇所ごとに「遠景」と「近景」をセットで撮影

外壁・屋根・基礎・内壁・天井・床・ドア・窓・キッチン・浴室など、被害を受けた箇所すべてについて、次の2枚をセットで撮っておきます。

  • 被害箇所全体が分かる写真
  • 損傷部分を拡大した写真

家の中は、被災した部屋ごとに全景写真を撮ったうえで、被害箇所の「寄り」の写真も忘れずに撮影してください。

罹災証明書の申請方法

罹災証明書とは

火災や自然災害によって住宅が受けた被害の程度を、市区町村が証明する公的な書類です。被災者生活再建支援金(最大300万円)などの公的支援、税金や保険料の減免、各種手続きの再開など、生活再建の入口となる非常に重要な書類です。

申請書の入手方法

申請書は、市区町村役場の窓口、または自治体の公式ウェブサイトから入手できます。近年は申請書の様式が全国で統一され、一部自治体ではオンライン申請にも対応しています。お住まいの市区町村の防災・危機管理担当のページを確認しましょう。

申請に必要なもの

  • 罹災証明交付申請書(オンライン申請の場合は入力フォームで代用されることも)
  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 被災箇所が分かる写真
  • 代理人が申請する場合は委任状(同居の親族を除く)

申請後、自治体の担当者による現地調査が行われ、その結果に基づいて罹災証明書が発行されます。

保険申請で気をつけること

罹災証明書がなくても保険は申請できる

火災保険(水災補償)の請求には、実は罹災証明書は必須ではありません。保険会社は独自の鑑定人が現地を調査して被害を査定するためです。ただし、片付ける前の写真撮影は保険申請でも同じく最優先です。罹災証明書の申請と並行して、できるだけ早く保険会社にも連絡しましょう。

修理・応急処置をする前にも写真を

安全確保のためにブルーシートをかけたり、応急的な処置をしたりする場合は、処置の前後それぞれで写真を撮影しておきましょう。

修理後の申請も可能だが、証拠は必須

法律上、被害発生から3年以内であれば、修理が終わった後でも保険金を申請できます。ただし、その場合も被害箇所の写真や証拠書類の提出が必要になるため、修理を急ぐ場合でも記録だけは必ず残しておいてください。

見積書は内訳が分かるものを

修理業者から見積もりを取る際は、修理費の総額だけでなく、修理内容・部品や材料の単価と数量・工事日数や人件費の内訳が明記された見積書をもらうようにしましょう。内訳が不明瞭だと、保険会社の査定に時間がかかったり、減額の原因になったりすることがあります。

建物の平面図が必要になることも

水災の申請では、建物内のどこが浸水したのかを示すために、平面図の提出を求められることがあります。手元に間取り図がある場合は用意しておくとスムーズです。

申請書の記載で注意したいこと

  • 被害箇所は具体的に、抜け漏れなく記載する:「床上浸水」だけでなく、キッチン・浴室・収納など、被害を受けた場所を一つひとつ書き出しておくと、後の査定がスムーズになります
  • 日付・時刻をできるだけ正確に:いつ浸水したか、いつ気づいたかを記録しておくと、被害の経緯を説明しやすくなります
  • 申請は早めに、ただし正確に:時間が経つほど経年劣化との区別がつきにくくなるため、できるだけ早く申請することが望ましいですが、記載内容に誤りがあると後の手続きに支障が出るため、落ち着いて正確に記入しましょう

まとめ:水害にあったときの行動順序

  1. まず安全確保:無理に片付けず、二次被害(感電・ガス漏れなど)に注意する
  2. 片付ける前に写真撮影:建物全景・浸水の深さ・被害箇所ごとの遠景と近景をセットで
  3. 罹災証明書の申請書を入手:市区町村役場の窓口またはウェブサイトから
  4. 保険会社への連絡と申請の準備:罹災証明書を待たずに、写真をもとに早めに連絡する
  5. 片付け・応急処置は、その都度写真を残しながら進める
  6. 見積書・平面図など、必要書類をそろえて申請する

水害は突然やってきます。だからこそ、「まず記録、片付けはその後」という順序を知っているかどうかが、その後の生活再建のスピードを大きく左右します。もしもの備えとして、この流れをぜひ覚えておいてください。


本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の被災状況や保険契約内容による違いがあります。具体的な手続きについては、お住まいの市区町村および加入している保険会社に必ずご確認ください。

参考にしたサイト

この記事を書いた人

fp.yamagishi

金融機関に勤務しながら、副業でファイナンシャル・プランナーをしています。大学卒業後に金融機関に勤め、10年勤務した後、同業に転職。
25年以上の金融機関勤務経験を活かし、皆さんの資産運用・お金の問題を支援できましたらと考えています。

【資格】
・ファイナンシャルプランナー(CFP)
・FP技能検定1級取得
・貸金業取扱主任者