
育児と仕事の両立をしやすくするための制度で育児時短就業給付制度というものがあると聞きました。なんとなくはイメージあるのですが、どのような制度でしょうか。
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やまぎし
育児時短就業給付制度は、2025年4月に新設された制度で、育児と仕事の両立を支援するために設けられました。この制度は、雇用保険の被保険者が2歳未満の子どもを育てるために時短勤務を選択した際、減少した収入の一部(約10%)を補填してくれます。
【2025年4月開始の育児時短就業給付】
給付金の額、対象者と期間、申請方法について
育児時短就業給付とは
育児時短就業給付とは、2歳未満の子どもを育てる人が、所定労働時間よりも短い時間で働いた場合に、時短期間中の賃金の約10%が支給される制度です。
出産や育児に関係する給付には、育児休業給付と出生時育児休業給付の2つがありましたが、雇用保険法の改正により、2025年4月から育児時短就業給付と出生後休業支援給付金が新たに2つ創設されました。
<厚生労働省HP>
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001395073.pdf
<参照:厚生労働省HP>
対象者

育児時短就業給付の支給対象となるのは、どちらの条件も満たす人です。
・2歳未満の子どもを養育するために、時短で働いている育休から時短で復帰
・時短開始前2年間に被保険者期間*が12ヶ月以上ある
*賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は、賃金の支払いの基礎となった時間が80時間以上ある)月
支給対象となる時短制度
支給対象となる時短制度は、会社が定める週の労働時間よりも短時間で働く場合に適用になります。また、以下のような制度が適用されている人も、要件を満たせば支給対象となります。
特別な労働時間制度で働く場合の要件
・フレックスタイム制⋯⋯清算期間における総労働時間を短縮して働く場合
・変形労働時間制⋯⋯対象期間の総労働時間を短縮して働く場合
・裁量労働制⋯⋯みなし労働時間を短縮して働く場合
・シフト制⋯⋯1週間の平均労働時間を算定し、短縮が確認できる場合
対象外となるケース
以下にあてはまる場合、支給対象となりません。細かい内容ですが、注意が必要です。
・月の途中で退職し、被保険者資格がなくなった
・週の所定労働時間が20時間未満の労働条件で転職した
支給対象期間はいつから?いくら支給される?
支給対象期間
支給対象となるのは、育児時短就業を開始した月から終了する月までです。子どもが2歳に達した場合や、産前産後休業、育児休業、介護休業のいずれかを開始した場合は、その時点で支給対象外となります。
支給額と計算方法
育児時短就業給付金は、時短就業中の賃金の10%程度が支給されます。実際の支給額は、「育児時短就業開始時賃金月額」と比較して賃金がどれくらい下がったかによって決まります。育児時短就業開始時賃金月額は、時短勤務を始める直前の6ヶ月間に支払われた賃金の総額を180で割った数に、30をかけた金額で算出できます。
給付金の計算方法は、以下3つの方法があります。なお、時短前の賃金額は育児時短就業開始時賃金月額を指し、時短中の賃金額は、支給対象月に支払われた賃金額を指します。(1)賃金が時短前の賃金額の90%以下の場合
計算式
支給額 = 時短中の賃金額 × 10%
計算例
時短前の賃金額 = 30万円
時短中の賃金額 = 20万円
20万円 × 10% = 2万円(支給額)(2)賃金が時短前の賃金額の90%超〜100%未満の場合
計算式
支給額 = 時短中の賃金額 × 調整後の支給率*
*調整後の支給率は、{9,000 × 時短前の賃金額 ÷ (時短中の賃金額 × 100)- 90}÷ 100で算出
計算例
時短前の賃金額 = 30万円
時短中の賃金額 = 28万円
28万円 × 6.43%* = 1万8,004円(支給額)
*{9,000 × 30万円 ÷ (28万円 × 100)- 90}÷ 100 = 0.06428(3)賃金と(1)または(2)の合計が支給限度額を超える場合
計算式
支給額 = 支給限度額* – 時短中の賃金額
*45万9,000円(2025年7月末までの上限額)
計算例
時短前の賃金額 = 47万700円(上限額)
時短中の賃金額 = 42万円
時短中の賃金額が時短前の賃金額の90%以下のため、支給率は10%となるが、42万円×10%で4万2,000円になる。時短中の賃金額の42万円と合計すると46万2,000円で、支給上限額を上回るため、以下の金額が支給される。
45万9,000円 – 42万円 = 3万9,000円(支給額)
支給されないケース
以下のケースに該当する場合は、給付金が支給されません。
・時短中の賃金が、時短前の賃金額の100%以上の場合
・時短中の賃金が、支給限度額*以上の場合
・計算方法(1)〜(3)の結果が、最低限度額以下の場合
*45万9,000円(2025年7月末までの支給限度額)
時短開始後に賃金に変化がない、または上がった場合は支給対象外となります。また、「支給額と計算方法」で紹介した(1)〜(3)で算出した支給額が、最低限度額である2,295円以下の場合も支給対象外となります。
育児時短就業開始時賃金(時短前の賃金額)の上限と下限も以下のように定められており、範囲内の賃金でなければ支給されません。
育児時短就業給付の申請方法
育児時短就業給付を受けるには、ハローワークに会社から申請をおこないます。その際、以下の書類の提出が必要です。
・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
・所定労働時間短縮開始時賃金証明書*育児時短就業給付受給資格確認票
・(初回)育児時短就業給付金支給申請書*育児休業から同一の子どもについて育児時短を開始する場合は提出不要
また、申請に際して時短の開始と賃金額、労働時間、育児の事実を確認するために、以下の書類の添付も求められます。住民票などは従業員から会社へ提出が必要となるため、あらかじめ準備しておいてください。
・賃金台帳、出勤簿、タイムカード、労働条件通知書、育児短時間勤務申出書、育児短時間勤務取扱通知書、就業規則など
・母子健康手帳(出生届出済証明のページと分娩予定日が記載されたページ)、住民票、医師の診断書(分娩予定日証明書)など
まとめ
育児時短就業給付は2025年4月改定された制度です。申請は会社からハローワークに申請します。会社側もよく理解していない点もあるかと思います。こういった制度がありますので、手続きを一緒にやりましょうというスタンスも大事かと思います。
上手に補助金を利用しながら、お子様との時間を確保いただけたらと思います。