親の介護「介護費用」を知っておこう

お客様

まだまだ先かと思っていますが、両親の介護が必要になった場合、お金の面で心配があります。親の年金や資産だけでは足りず、私も負担しなければならないのかどうか。介護期間もどのくらいになるかわからず、心配です。

 FP
やまぎし

親御さんの介護は心配になりますよね。大なり小なり必ず問題になるお話しですので、お金がどのくらい必要になるかを重点的にご説明いたします。

介護費用はどのくらいかかるか<平均:8万円/月・期間:5年>

<生命保険文化センター調べ>

この表を見ていただくと、平均的な試算で毎月8万円✖️12ヶ月✖️5年=480万円、毎月の費用が10万円以上かかる方が3割もいることを考えると果たしていくらかかるか不安になってきます。しかも寿命が増えるともっとかかる算出になります。

ただし、この金額はあくまでも平均ですので、在宅サービスのみの方や施設利用を含めた利用状況により、個人差もあるかと思います。

施設を利用した介護費用の内訳の目安

介護施設の費用には介護保険が適用されますが、全額が保険でカバーされるわけではありません。
介護保険サービスを利用した場合、利用者は原則として費用の1割を負担します。ただし、一定以上の所得がある方は2割または3割の負担となります。

・施設サービス費(介護保険適用、原則1割負担)
・居住費
・食費
・日常生活費

例えば、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の場合、1ヶ月の自己負担の目安は以下になります。

ただし、所得の低い方や1ヶ月の利用料が高額になった方については、負担軽減措置が設けられています。例えば、「特定入所者介護サービス費(補足給付)」や「高額介護サービス費」などの制度があります。
これらの制度を利用することで、所得に応じて居住費や食費の負担額が軽減されたり、月々の利用者負担額に上限が設けられたりします。では、介護費用を抑える補助としてどのような制度が設けられているでしょうか。

介護費用を抑える仕組みとは

介護費用を抑える仕組みとして、公的介護保険があります。介護費用は収入に応じて1〜3割の負担になります。しかも、特定入居者介護サービス費や高額介護サービス、医療費控除を使える制度もあり、所得や介護状況によってそれぞれの補助制度があります。

特定入居者介護サービス費

<厚生労働省HP>

特定入所者介護サービス費(補足給付)は、介護保険制度の一環として、所得や資産が一定以下の低所得者が介護施設に入所する際に、食費や居住費の負担を軽減するための制度です。

対象者と条件
• 所得要件: 市町村民税が非課税であることが必要です。配偶者が課税されている場合は対象外となります。
• 資産要件: 預貯金などの資産が一定額以下であること。単身の場合は1,000万円以下、夫婦の場合は2,000万円以下が目安です。
負担軽減内容
• 食費と居住費: 所得段階に応じて、基準費用額を超える部分について補助が行われます。例えば、第2段階では月額約26,400円、第3段階では月額約58,800円の負担軽減が可能です。
この制度は、低所得者層への経済的支援を目的としており、申請手続きを通じて市区町村から認定を受ける必要があります。

高額介護サービス費

高額介護サービス費とは、介護保険を利用している方が、1か月の介護サービスの自己負担額が一定の上限を超えた場合に、その超過分を払い戻す制度です。

制度の概要
• 対象: 介護保険サービスの利用者で、自己負担が1割から3割の方です。所得や世帯収入に応じて負担割合が異なります.
• 対象外費用: 福祉用具購入費、住宅改修費、施設での食費や居住費、日常生活費などは支給対象外です.
• 上限額: 所得区分に応じて月々の上限額が設定されています。例えば、市民税非課税世帯では24,600円、課税所得380万円未満の世帯では44,400円などです.
• 申請方法: 利用月から約3か月後に自治体から申請書が送付され、申請後は自動的に支給されます。振込口座を変更する場合には再度申請が必要です。2年以内の申請が必要ですので、忘れずに申請することが必要になります。申請方法に関しては各自治体の介護保険担当部署に確認をお願いします。

医療費控除

介護保険制度下で提供される施設サービスの自己負担額が医療費控除の対象になります。所得が相応にある方や親御さんを扶養に入れらている方は活用されると節税効果になります。

対象となる施設サービス
1. 介護老人保健施設: リハビリテーションを中心とした医療ケアと生活サービスを提供する施設で、介護費、食費、居住費の自己負担額が控除対象となります。
2. 介護医療院: 長期的な医療と介護を必要とする高齢者向けの施設で、同様に介護費、食費、居住費の自己負担額が控除対象です。
3. 特別養護老人ホーム: 常時介護が必要な方のための生活施設で、支払った額の2分の1が控除対象となります。
医療費控除の計算方法
• 年間に支払った総医療費(介護費用含む)から10万円(または総所得金額の5%のいずれか低い方)を引いた金額が控除対象となります。
• この控除額を総所得金額から差し引くことで、課税所得が減少し、結果として納税額が少なくなります。

まとめ

介護の問題は誰にでも起こることと思います。親御さんへの対応はご自身の準備としても非常に参考になるかと思います。今までお話ししてきたように、介護への補助はありますが、全てをまかなえるものでもありません。現状の平均から考慮すると500万円程度は最低必要になってくるかと思われますが、状況次第ですのでこれで充分かともわかりません。

年金や公的なサービスをうまく利用することを考えますと、平均の2倍の1000万円程度を介護が必要な年齢(80歳くらいでしょうか)時に残しておくとそれなりの安心感はあるのではと思われます。

親御さんやご自身がどのような介護を望まれているかを元気な間に話したりエンディングノートに記載し、その要望や状況に沿った資産形成をしていくことが大事になるかと思います。

ライフプランを作成しながら、ご自身の今後をイメージし足元の資産形成をしていくことの大事さを改めて痛感しますね。

この記事を書いた人

fp.yamagishi

金融機関に勤務しながら、副業でファイナンシャル・プランナーをしています。大学卒業後に金融機関に勤め、10年勤務した後、同業に転職。
25年以上の金融機関勤務経験を活かし、皆さんの資産運用・お金の問題を支援できましたらと考えています。

【資格】
・ファイナンシャルプランナー(CFP)
・FP技能検定1級取得
・貸金業取扱主任者