住宅リースバック・リバースモーゲージ——やっぱりおすすめしません。FPからの注意喚起

「老後の生活費が心配」「家に住み続けながら現金が欲しい」——そんな悩みにつけ込むように、近年急増しているのが住宅リースバックリバースモーゲージの勧誘です。

テレビCMや新聞広告でも目にする機会が増えましたが、ファイナンシャルプランナー(FP)の立場からはっきり申し上げます。多くの方には、おすすめできません。

2025年5月には国民生活センターが「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!」という注意喚起を発表するほど、トラブルが急増しています。この記事では、2つの仕組みの概要からリスク、相談事例まで、高齢の方にもわかりやすく解説します。

1. 住宅リースバックとは?

住宅リースバックとは、自分の家を業者に売却し、その後は家賃を払いながら同じ家に住み続ける仕組みです。

わかりやすく言うと——「家を売ってお金を受け取る。でも、すぐに引っ越さなくていい。その代わり、毎月家賃を払う」ということです。

リースバックのメリット

  • まとまった現金をすぐに受け取れる
  • 住み慣れた家に引き続き住める
  • 固定資産税や建物の修繕費を払わなくて済む
  • 周囲に売却したことを知られにくい

リースバックのデメリット(ここが問題)

  • 売却価格が相場より大幅に安い(市場価格の60〜70%程度が多い)
  • 家賃が後から値上げされるケースがある(例:6万円→11万円に値上げされたトラブルも)
  • 家賃を払えなくなると強制退去になる
  • 買い戻し条件が厳しく、実際にはほとんど買い戻せない
  • 相続する財産がなくなる

2. リバースモーゲージとは?

リバースモーゲージとは、自宅を担保にお金を借り、死亡後に家を売却して返済する仕組みです。銀行や自治体が提供しています。

わかりやすく言うと——「家を担保に、毎月生活費を借りる。自分が亡くなったら家を売って返済する」ということです。リースバックと違い、所有権はそのままです。

リバースモーゲージのメリット

  • 家の所有権を持ったまま生活資金を得られる
  • 毎月の返済が不要(利息のみor死亡後一括)
  • 公的機関(自治体・社会福祉協議会)が提供するものは比較的安心

リバースモーゲージのデメリット(ここが問題)

  • 長生きリスク:借入限度額を超えると、生きている間に借りられなくなる
  • 金利上昇リスク:変動金利が多く、将来の利息負担が増える可能性がある
  • 不動産価値下落リスク:担保評価が下がると、途中で契約を打ち切られることも
  • 相続トラブル:自宅が売却されるため、子ども・孫に家が残らない
  • マンションは対象外のケースが多い

3. おすすめできない5つのポイント

① 売却価格が不当に安い

リースバックでは、業者が将来の家賃収入を見込んで買い取るため、市場価格の60〜70%程度での売却が一般的です。3,000万円の家が1,800万〜2,100万円にしかならないケースも珍しくありません。

② 家賃の値上げリスクがある

契約時は低めの家賃でも、数年後に一方的に値上げされることがあります。国民生活センターには「月6万円だった家賃が11万円に上がった」という相談も寄せられています。家賃を払えなくなれば、強制的に退去させられます。

③ クーリングオフの説明が不十分

リースバック業者のうち、約44%がクーリングオフ(契約をやめる権利)を適切に説明していないという調査結果があります。「契約してしまったから仕方ない」とあきらめる前に、必ず確認してください。

④ 長生きすると詰む(リバースモーゲージ)

リバースモーゲージは「死亡時に一括返済」が原則ですが、長生きして融資限度額に達すると、それ以降は借りられなくなります。老後の生活資金が突然なくなるリスクがあります。

⑤ 家族への影響が大きい

リースバックもリバースモーゲージも、最終的に自宅が手元に残りません。子どもや孫に住む家を残したい方、家族との同居を将来考えている方には特に不向きです。家族に内緒で契約してトラブルになるケースも多数あります。

4. 消費者庁・国民生活センターへの相談件数の推移

住宅リースバックに関する相談件数は、PIO-NET(消費生活情報ネットワークシステム)のデータで急増しています。

年度相談件数
2019年度24件
2020年度約40件
2021年度68件
2022年度約120件
2023年度221〜227件
2024年度239件

5年間で約10倍に急増しています。相談者の約7割が70歳以上であり、高齢者が主なターゲットになっていることがわかります。

2025年5月21日、国民生活センターは「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!」というタイトルで緊急の注意喚起を発表しました。

5. もし契約してしまった方へ——対処のポイント

まず確認すること

  • クーリングオフ期間内か確認する:契約書面を受け取った日から8日以内なら無条件で解約できます(宅建業法の適用がある場合)
  • 契約書をしっかり読む:家賃の改定条件、買い戻し条件、退去条件を再確認する
  • 録音・書面を保存する:業者とのやりとりは必ず記録を残す

相談先

  • 消費者ホットライン「188」(いやや!):最寄りの消費生活センターにつながります。無料。
  • 国民生活センター:https://www.kokusen.go.jp/
  • 弁護士・司法書士:契約の取消・解除を検討する場合は専門家へ
  • ファイナンシャルプランナー(FP):契約前の相談、他の方法の検討

「解約できないか?」と感じたら

「説明が不十分だった」「強引に勧められた」「クーリングオフの説明がなかった」などの事情があれば、契約の取消しや解除ができる可能性があります。一人で悩まず、まず188に電話してください。

6. 老後の資金が心配なら、まず考えてほしいこと

住宅リースバックやリバースモーゲージに頼る前に、以下の選択肢を検討してください。

  • 家を売って住み替える:相場価格で売却し、コンパクトな家や賃貸へ。差額を老後資金に
  • 自宅の一部を貸す:空き部屋を賃貸に出す
  • 公的制度を活用する:社会福祉協議会の「不動産担保型生活資金」は、公的で比較的安全なリバースモーゲージの一種
  • 家族と相談する:同居・近居・資金援助など、家族全体で解決策を考える

まとめ

住宅リースバックとリバースモーゲージは、仕組み上「現金が手に入る」メリットがある一方、長期的に見ると損をするケースが非常に多い制度です。

特に注意してほしい点をまとめます。

  • 売却価格は相場より大幅に安い
  • 後から家賃を値上げされるリスクがある
  • クーリングオフ説明が不十分な業者が多い
  • 長生きすると生活資金が尽きる可能性がある
  • 家族に財産(家)が残らない

「老後のお金が心配」という気持ちは、とても自然なことです。でも、その不安につけ込む業者も残念ながら存在します。契約前には必ずFPや消費生活センターに相談してください。

参照資料・サイト

  • 国民生活センター「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!」(2025年5月21日)https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20250521_1.html
  • 消費者庁「住宅リースバックに関する消費者向け注意喚起」
  • 国土交通省「住宅リースバックガイドライン」(2022年)
  • 一般社団法人住宅リースバック協会
  • PIO-NET(消費生活情報ネットワークシステム)相談件数データ
  • 金融庁「リバースモーゲージに関するQ&A」

※本記事はFPとしての一般的な見解であり、個別の契約内容によって状況は異なります。具体的な判断については専門家にご相談ください。

この記事を書いた人

fp.yamagishi

金融機関に勤務しながら、副業でファイナンシャル・プランナーをしています。大学卒業後に金融機関に勤め、10年勤務した後、同業に転職。
25年以上の金融機関勤務経験を活かし、皆さんの資産運用・お金の問題を支援できましたらと考えています。

【資格】
・ファイナンシャルプランナー(CFP)
・FP技能検定1級取得
・貸金業取扱主任者