住宅ローンは手取りの何%が適正?高騰する住宅価格を前に「買うべきか・借り続けるべきか」FPが本音で答える

「家賃を払い続けるのはもったいない」「早く家を買ったほうがいい」——周囲からそんな声を聞いたことはありませんか? しかし今、住宅価格は過去最高水準に達しています。手取り収入に対して適正とされる住宅ローンの水準をはるかに超えた額を借りなければ家が買えない時代に、本当に「今」買うべきなのか。FPとして、データと理論に基づいて正直にお伝えします。


住宅ローンの「適正水準」とは何か

ファイナンシャルプランナーの世界では、住宅ローンの返済額は手取り世帯収入の20〜25%以内が適正とされています。これは「返済しながらも、老後資金・教育費・生活防衛資金をきちんと積み立てられる水準」として導かれた目安です。

手取り世帯月収適正ローン返済額(20%)適正ローン返済額(25%)
30万円(年収約500万円)月6万円月7.5万円
40万円(年収約650万円)月8万円月10万円
50万円(年収約800万円)月10万円月12.5万円
60万円(年収約1,000万円)月12万円月15万円

月6〜10万円の返済額で借りられる住宅ローンは、金利1.5%・35年返済の場合、約2,000〜3,300万円程度。つまり適正水準で組めるマイホームの価格は、年収500万円世帯なら2,000万円台が上限ということになります。


現在の住宅価格——過去10年でどれだけ上がったか

首都圏の新築マンション平均価格の推移を見てみましょう。

首都圏新築マンション平均価格(目安)対2013年比
2013年約4,800万円基準
2016年約5,500万円+15%
2019年約5,900万円+23%
2021年約6,260万円+30%
2023年約8,100万円+69%
2025年約9,000万円超+88%

わずか10年余りで価格はほぼ2倍になりました。戸建て住宅も同様に上昇しており、郊外や地方都市でも割安感が薄れています。背景には建築資材・人件費の高騰、低金利による投資需要、インバウンド需要などが複合的に絡んでいます。

「適正水準」と「現実価格」のギャップ

項目金額
首都圏新築マンション平均価格約9,000万円
頭金10%(自己資金)900万円
借入額約8,100万円
月返済額(金利1.5%・35年)約25.3万円
手取り月収(年収500万円世帯)約33万円
返済比率約77% ⚠️
適正水準(20〜25%)の月返済額6.6〜8.3万円

返済比率が77%——毎月の手取りのほぼ4分の3をローン返済に充てることを意味します。食費・光熱費・保険・教育費・老後積立……何も残りません。これは明らかに家計を破綻させるリスクのある水準です。


FPの結論:今の住宅価格水準では、賃貸の方が合理的

私は現時点では、よほどの高収入世帯でなければ住宅購入より賃貸を選ぶべきと考えています。その理由を3つお伝えします。

理由① 人口減少により、住宅価格は将来的に下落する

日本の人口はすでにピーク(2008年・約1億2,800万人)を過ぎ、減少局面に入っています。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2050年には約1億500万人、2070年には約8,700万人になると見込まれています。

推計人口現在比
2026年(現在)約1億2,400万人
2040年約1億1,000万人▲11%
2050年約1億500万人▲15%
2070年約8,700万人▲30%

人口が減れば住宅需要は必ず減ります。すでに地方では空き家率が20〜30%を超える地域が続出しており、首都圏でも郊外から価格下落が波及していくでしょう。今の高値圏で無理して購入した住宅が、10〜20年後に大きく値下がりするリスクは現実的です。「賃貸はお金をドブに捨てている」とよく言われますが、値下がりした住宅を高値で買った場合の損失はそれ以上になりえます。

理由② 人生のステージとともに、最適な住まいは変わる

20代・30代で購入した家が、50代・60代にも最適とは限りません。

  • 子育て期:部屋数が多い・学校区が重要
  • 子が独立後:広い家が「負担」に変わる
  • 老後:バリアフリー・駅近・病院へのアクセスが優先
  • 介護が必要になれば:施設への移住も現実的な選択肢

住宅を購入してしまうと、ライフスタイルの変化に対して柔軟に動きにくくなります。残債が売却価格を上回る「オーバーローン」の状態では身動きが取れません。賃貸であれば、その時々の生活スタイルに合わせて自由に住み替えができます。

理由③ 賃貸の方が、資産形成に使えるお金が残る

項目購入(ローン)賃貸
月の住居費返済25万円+管理費2万円=27万円家賃15万円
差額月12万円の余裕
差額を30年NISA積立(年利5%)約9,980万円
固定資産税・修繕費(30年合計)約600〜1,000万円追加不要

賃貸で浮いた差額を積立投資に回すと、30年後には約1億円近い資産になる計算です。「家賃はもったいない」という発想がいかに一面的かがわかります。


それでも「今、住宅を買いたい」人が気をつけること

住宅購入には「自分の城を持つ安心感」「リフォームの自由」「老後の家賃不要」など、数字だけでは語れない価値もあります。それでも購入を決断するなら、以下の5点を必ず確認してください。

① 返済比率は手取りの25%以内か

これは絶対に守ってください。25%を超えたローンは、収入減・金利上昇・病気などの想定外の事態に非常に脆弱です。頭金を増やす、購入価格を下げる、購入時期を数年遅らせるなど、この水準に収める方法を徹底的に模索してください。

② 変動金利のリスクを理解しているか

現在の住宅ローンの約7割が変動金利で組まれています。2024年以降、日銀は利上げに転換しており、今後さらに上昇する可能性があります。変動金利が1%上がるだけで月返済額は数万円単位で増えます。固定金利との比較検討は必須です。

③ 購入後のランニングコストを計算しているか

住宅は「買ったら終わり」ではありません。毎年の固定資産税(年20〜30万円)、マンションなら管理費・修繕積立金(月3〜5万円)、戸建てなら外壁・屋根の修繕費(10〜15年ごとに100〜200万円)が発生します。30〜35年の総コストで考えることが重要です。

④ 将来「売れる・貸せる」物件かどうか

「駅から徒歩10分以内」「都市部・人口増加エリア」「築年数が浅い」などの条件を満たす物件は、人口減少局面でも需要が保たれやすいです。郊外の築古・駅遠物件は、将来の流動性低下リスクを覚悟した上で購入する必要があります。

⑤ 団信(団体信用生命保険)を最大限活用する

住宅ローンには団信が付帯しており、契約者が死亡・高度障害になった場合にローン残高がゼロになります。これは実質的に「大きな生命保険」です。三大疾病保障・就業不能保障なども付いた団信を選ぶことで、万一のリスクを軽減できます。


まとめ:「今すぐ買う」より「買える状態を作る」が正解

ポイント内容
①適正返済水準手取り世帯収入の20〜25%以内
②現実のギャップ首都圏では多くの世帯が適正水準の2〜3倍を借りる状況
③人口減少リスク2070年には人口が▲30%。住宅需要・価格への下押し圧力が長期的に続く
④ライフスタイル変化購入は「縛り」にもなる。人生の各ステージに合わせた住み替えができない
⑤賃貸の合理性浮いたお金を投資に回せば長期的な資産形成でむしろ有利なケースも
⑥それでも買うなら返済比率25%以内・金利上昇対策・ランニングコスト計算・売れる立地を選ぶ

「家賃を払い続けるのはもったいない」という昭和的な価値観は、人口増加・地価上昇が前提のものでした。人口が減り、空き家が増え、住宅価格が歴史的高値にある今、その前提は崩れています。焦らず、冷静に、数字と向き合って判断してください。

今すぐ買わなくていい。それでも将来買いたいなら、今は「頭金を増やしながら、買える状態を整える時期」として使うのが、FPとしての私の正直なアドバイスです。

この記事を書いた人

fp.yamagishi

金融機関に勤務しながら、副業でファイナンシャル・プランナーをしています。大学卒業後に金融機関に勤め、10年勤務した後、同業に転職。
25年以上の金融機関勤務経験を活かし、皆さんの資産運用・お金の問題を支援できましたらと考えています。

【資格】
・ファイナンシャルプランナー(CFP)
・FP技能検定1級取得
・貸金業取扱主任者