転職は「年収」だけで決めない——在宅勤務・副業・手取りまで、FPが見るチェックポイント

家計をよくする方法は、大きく分けて2つあります。ひとつは「支出を減らす」こと。もうひとつは「収入を増やす」ことです。節約には限界がありますが、収入は、工夫しだいで、伸ばせる余地があります。そのための有力な方法が、転職です。

ただ、転職は「年収が上がるかどうか」だけで決めると、あとで、後悔することがあります。FPの目線で、年収以外に、確認しておきたいポイントを、図と表を使って、やさしく整理しました。10分ほどで読めます。特に、いま注目されている「在宅勤務」と「副業」を、しっかり取り上げます。

転職で見る、7つの視点

転職で、年収のほかに見るべき7つの視点
視点なぜ大切か(お金の面)
① 在宅勤務のルール・頻度通勤費・時間・光熱費・副業の時間に影響する
② 通勤時間・勤務地通勤が短いほど、自由な時間が増え、家賃などの選択肢も広がる
③ 副業のルール収入の柱を増やせるか。禁止や許可制だと、動きにくい
④ 退職金・企業年金転職で、将来の受取額が変わる
⑤ 福利厚生・手当住宅手当・家族手当など。年収に表れない価値がある
⑥ 住宅ローンなどの審査転職直後は、審査で不利になることがある
⑦ タイミング・手続き賞与・社会保険・住民税で、手取りが変わる

在宅勤務は「あるか」より「どう決まっているか」

いま、在宅勤務はどうなっている?

在宅勤務(テレワーク)は、新聞などでも、たびたび取り上げられています。パーソル総合研究所の調査(2026年)によると、状況は次のとおりです。

在宅勤務のいま
データ数字読み取れること
正社員のテレワーク実施率(2026年7月)21.4%前年より1.1ポイント低下。緩やかに減っている
「原則出社」と指示される割合24.6%2年連続で増加。大手を含む、すべての企業規模で前年を上回った
テレワーク実施者のうち、続けたい人81.6%働く人の希望は高いが、会社の方針は「出社回帰」の流れも

つまり、「在宅勤務OK」と書かれた求人でも、将来、ルールが変わる可能性があります。ここは、慎重に確認しましょう。

面接・内定時に、確認したいこと

確認すること質問の例
在宅の頻度「在宅勤務は、週に何日までできますか。実際の社員の平均は、どのくらいですか」
ルールの決まり方「在宅は、制度として、就業規則などで決まっていますか。それとも、上司の裁量ですか」
出社日の決め方「出社日は、固定ですか。自分で選べますか」
将来の変更「出社日数の方針は、今後、変わる可能性はありますか。過去に変更はありましたか」
居住地の制限「勤務地から離れた場所に、住んでも大丈夫ですか」
機器・環境「PC・モニター・椅子などは、貸与されますか。通信費の補助はありますか」
評価「在宅でも、出社と同じ基準で、評価されますか」

在宅勤務で、家計はどう変わる?

項目変わることお金の面での注意
通勤費定期代から、出社日ごとの実費精算に変わる会社もある通勤手当は、社会保険料の計算の対象。手当の出し方で、手取りが変わることも
在宅勤務手当月数千円〜の手当を出す会社もある会社が、定額で支給する手当は、原則、給与として課税される。実費精算の場合は、扱いが異なる
光熱費自宅で過ごす時間が増え、電気代などが増える手当の有無を、事前に確認する
食費昼食を自宅でとれば、外食費を抑えられる一方で、自宅の食費は増えるので、差し引きで考える
住まい出社頻度が低ければ、通勤圏外の、家賃の低いエリアも候補に居住地の制限がないか、必ず確認する

通勤時間が短くなると、お金と時間が変わる

在宅勤務で、1日2時間が自分の時間に

往復2時間の通勤が、週3日なくなると、年間で約300時間の時間が生まれます。この時間を、何に使うかで、家計は、大きく変わります。

使い道期待できること
家庭のこと家事・育児・介護の時間が増える。外部サービスの利用が減ることもある
副業・スキルアップ収入の柱が増える。資格や学びで、次の転職・昇給にもつながる
健康・睡眠体調が整い、病気による出費や、休業のリスクを減らせる

副業で、トータルの収入を上げる

在宅で浮いた時間の一部を、副業にあてる方法があります。仮に、月10時間、または20時間を、副業に使った場合の収入の目安を、表にしました。

副業の時間(月)時給1,500円の場合(年間)時給3,000円の場合(年間)
10時間約18万円約36万円
20時間約36万円約72万円

※あくまで試算です。副業の収入は、仕事の種類や、経験で、大きく変わります。

副業のルール・お金の注意点

項目ポイント
会社のルール副業を認める企業は増えています(ある調査では、正社員の副業を「容認」する企業は5割超)。ただし、許可制・届出制や、禁止の会社もあります。転職前に、必ず確認を
確定申告副業の所得(収入から経費を引いた額)が、年間20万円を超えると、原則、確定申告が必要です
住民税副業の分が、会社に知られることがあります。住民税の納め方の選択を、確認しましょう
労働時間雇われる副業は、本業とあわせて、労働時間が通算されます。働きすぎに注意
競業・情報管理同業への副業や、本業の情報の持ち出しは、トラブルになりやすい
社会保険副業先でも、条件を満たすと、社会保険の加入が必要になる場合がある

転職のお金の注意点(年収以外)

転職の流れと、お金の注意ポイント
項目チェックすることなぜ大切か
年収の内訳基本給・賞与・残業代・固定残業代(みなし残業)・手当に分けて確認額面が高くても、固定残業代が多いと、実質の時給は低いことも
手取り年収から、社会保険料・税金を引いた額で考える年収が同じでも、手取りは、手当の出し方で変わる
賞与の支給日支給日に在籍が必要か退職日によっては、賞与をもらい損ねる
退職金・企業年金退職金制度の有無、勤続年数による差転職で、勤続年数がリセットされると、退職金が減ることがある。企業型DCは、移換の手続きが必要
有給休暇残日数と、消化できるか最終出社日と退職日の間で、消化する人が多い
住宅ローンなどの審査転職直後は、勤続年数が短く、審査で不利になることがあるローンを組む予定があれば、転職の前に、審査を済ませるか、時期を相談する
空白期間退職から入社までの間は、国民健康保険・国民年金に切り替え期間が空くほど、手続きと、保険料の負担が発生
失業給付転職先が決まっていれば、原則、受け取れない自己都合の退職は、給付制限があることがある
試用期間試用期間中の給与・条件本採用後と、同じか確認する

労働条件通知書で、書面で確認しよう

口頭の約束は、あとで、「言った・言わない」になりがちです。内定が出たら、労働条件通知書(雇用契約書)で、次の項目を、書面で確認しましょう。

  • 年収の内訳(基本給・手当・固定残業代・賞与)
  • 勤務地、在宅勤務の可否と頻度(可能なら、書面に明記)
  • 副業の可否と、手続き
  • 試用期間の有無と、条件
  • 就業時間、休日、有給休暇

FPからの、まとめのアドバイス

転職は、「年収」だけでなく、「手取り」「時間」「働き方」「将来の保障」の4つで、トータルで考えることが、大切です。

考える軸チェックのポイント
お金(手取り)年収の内訳、手当、賞与、退職金、福利厚生
時間通勤時間、在宅勤務の頻度、残業の実態
働き方在宅のルール、副業の可否、出社方針の変わりやすさ
将来退職金・企業年金、キャリアの伸びしろ、ローンへの影響

在宅勤務で、通勤時間が減り、副業や家庭の時間が増えれば、「収入が増える」だけでなく、「暮らしの余裕」も、大きくなります。転職活動中は、ぜひ、この視点で、企業を見てみてください。

お金に関する不安や、転職のタイミングの相談は、いつでも、お気軽にどうぞ。


本記事は、パーソル総合研究所の調査(2026年)などの公開情報をもとに、FPの視点で、一般的な情報として、まとめたものです。制度・数字は、変更される場合があります。個別の転職・税金・社会保険の判断は、勤務先、税務署、社会保険事務所、専門家にご確認ください。副業の収入例は、試算であり、収入を保証するものではありません。

参考にしたサイト
ニュースリリース|「テレワークに関する調査(2026)」を発表 実施率は21.4%、「原則出社」は増加傾向|パーソル総合研究所
【テレワーク調査2026】81.6%「在宅で働きたい」…なのに“出社回帰”は2年連続増加|ビジネス+IT
みらいワークス、「副業・兼業に関する人事制度の実態調査2026」の結果を発表|日本経済新聞
テレワークの通勤手当は不要?社会保険料の計算や在宅手当の注意点|マネーフォワード

この記事を書いた人

fp.yamagishi

金融機関に勤務しながら、副業でファイナンシャル・プランナーをしています。大学卒業後に金融機関に勤め、10年勤務した後、同業に転職。
25年以上の金融機関勤務経験を活かし、皆さんの資産運用・お金の問題を支援できましたらと考えています。

【資格】
・ファイナンシャルプランナー(CFP)
・FP技能検定1級取得
・貸金業取扱主任者