リバースモーゲージは「老後の救済策」か「罠」か?3大リスク・金融機関の収益構造・すでに利用中の人が今すぐ確認すべき7項目

📢 FPからひと言:リバースモーゲージは「老後の救済策」として宣伝されますが、私はこの商品に否定的な立場です。自宅という最後の砦を担保に、変動金利で長期借入する構造は、高齢者にとって非常にリスクが高い。金融機関が積極的に販売する裏には、彼らに有利な収益構造があります。契約前に、この記事をぜひ最後まで読んでください。


📋 この記事でわかること

  • リバースモーゲージの仕組みと種類(リ・バース60・民間銀行型)
  • 過去10年間の利用実績データ(2018〜2024年度)
  • メリット・デメリット・3大リスク
  • 金融機関が積極販売する本当の理由
  • すでに契約している人が今すぐ確認すべき7項目
  • FPが否定派である理由

🏠 リバースモーゲージとは?仕組みをわかりやすく解説

リバースモーゲージとは、所有する自宅を担保に金融機関からお金を借り、毎月の返済は利息のみ。元金は契約者の死亡時(または契約期間終了時)に自宅売却か相続人の一括返済で精算する、高齢者向けローンです。

「通常の住宅ローンの逆」というのが名前の由来。ローンを組んで家を手に入れるのではなく、すでに持っている家を担保にお金を受け取る流れです。

日本のリバースモーゲージ3種類

種類提供主体資金使途特徴
リ・バース60住宅金融支援機構+提携金融機関(88社)住宅購入・建設・リフォーム・借換えのみ公的保証付き。ノンリコース型が主流
民間銀行型東京スター銀行・りそな・楽天等比較的自由(生活費・医療費等)金利は高め。変動金利が多い
社会福祉協議会型公的機関生活資金低所得・要保護世帯向け

ノンリコース型 vs リコース型

重要な区分として、ノンリコース型(担保不足でも相続人への追加請求なし)とリコース型(不足分は相続人が負担)があります。リ・バース60利用者の99.7%がノンリコース型を選択しています。


📊 過去10年間の利用実績データ(2018〜2024年度)

住宅金融支援機構「リ・バース60」の付保実績推移です(民間銀行型を除く)。

年度付保実績戸数付保実績金額主なトピック
2018年度約360戸約40億円ノンリコース型導入で急増
2019年度約716戸約90億円前年比約92%増・ほぼ倍増
2020年度約1,005戸約141億円前年比約40%増
2021年度1,257戸174.5億円前年比約40%増・取扱金融機関80社
2022年度約1,545戸(推計)約238億円(推計)ピーク期
2023年度1,382戸218億円前年比約10%減・減少に転じる
2024年度1,297戸207.9億円前年比約6%減・2年連続減少

📌 累計申込件数(2025年3月末時点):8,000件超 / 取扱金融機関数:88社

⚠️ 注目点:2022年度をピークに2年連続で件数・金額ともに減少しています。これは日銀の利上げによる金利上昇が影響していると考えられます。「月々の返済が少ない」魅力が薄れている現れです。

2024年度の申込者プロフィール

項目データ
平均年齢69.5歳
平均年収403万円
年金受給者の割合53.6%
平均融資額1,667万円
月々の平均返済額(利息のみ)4.2万円
主な資金使途注文住宅32.5%、リフォーム22.9%

✅ リバースモーゲージのメリット

  • 自宅に住み続けながら資金を得られる:老後に家を売ることなく、住みながら資金を確保できる
  • 毎月の返済額が少ない:元金返済不要で利息だけ(平均月4.2万円)
  • ノンリコース型なら相続人に借金を残さない:担保物件の売却で不足しても相続人への追加請求なし
  • 年金収入でも審査が通りやすい:通常の住宅ローンより審査基準が緩い場合がある
  • 老後のまとまった資金確保:年金だけでは不安な方の生活費補填やリフォーム資金に

⚠️ FPが警告する3大リスクとデメリット

🔴 リスク①:金利上昇リスク

民間銀行のリバースモーゲージは変動金利が多数派です。日銀が2024〜2025年にかけて利上げを続けており、既に楽天銀行の基準金利は2025年3月に引き上げられています。

3,000万円の借入で金利が0.5%上昇すると、月の利息が約1.25万円増加します。70代の固定収入でこの変動を吸収し続けることは非常に困難です。

🔴 リスク②:不動産価格下落リスク(担保割れ)

金融機関は定期的に担保評価を見直します。不動産価格が下落すると融資限度額が引き下げられ、超過分の即時返済を求められることがあります。地方物件・一部マンションはそもそも担保評価が低く利用できないケースも多い。

リコース型の場合、売却額が借入残高を下回ると、相続人(子ども)が差額を負担しなければなりません。

🔴 リスク③:長生きリスク(最も深刻)

これが最も深刻なリスクです。想定より長生きして借入枠を使い切ると、その後の生活資金が調達できなくなります。さらに契約期間に上限がある商品の場合、期間終了後も存命なら元金を一括返済しなければならず、返済できなければ自宅が競売にかけられます。

長生きすればするほど自宅を失うリスクが高まる——これがリバースモーゲージの本質的な問題です。

その他のデメリット

デメリット内容
対象物件の制限一戸建て(土地付き)が原則。マンションは対象外が多い
借入限度額が低い担保評価額の50〜60%程度が上限
相続人全員の同意が必要家族間のトラブルになるケースも
配偶者が住む家を失う危険本人が先に死亡した場合、連帯債務者でない配偶者は退去を迫られる
資金使途の制限(リ・バース60)住宅関連のみ。生活費・医療費には使えない
利用者の約3分の1が後悔「失敗した」「もっと調べるべきだった」という声が多数

🏦 金融機関が積極販売する本当の理由

銀行がなぜリバースモーゲージを積極的に販売するのか、その収益構造を知ることが消費者の自衛につながります。

金融機関の収益源

  1. 長期間の高い利息収入:元金返済を受けないため借入残高が長期維持される。高齢者が長生きするほど金融機関の利息収入は増える。金利は通常の住宅ローン(0.4〜1%台)より高い年2〜5%程度に設定
  2. 担保が確実に確保されている:死亡後に自宅を売却して確実に元金回収できる。一般の無担保ローンとは異なりリスクが低い
  3. リスクの外部化:リ・バース60は住宅金融支援機構の保険を活用することで、担保割れリスクを公的機関に転嫁できる。変動金利採用で金利上昇リスクも利用者に転嫁
  4. 高齢者市場の戦略的開拓:日本の65歳以上が保有する住宅資産は数百兆円規模。年金生活者は一般ローンが組めず預金も限られるため競合が少ない。超高齢社会の進展でニーズは今後も拡大

💡 FPの視点:金利2〜5%のローンを元金返済なしで何十年も続けることは、利用者が払い続ける利息の総額が膨大になることを意味します。「自宅に住み続けながら」という言葉の裏で、自宅の資産価値が毎月少しずつ金融機関に移転していると考えてください。


🚨 すでに契約している人が今すぐ確認すべき7項目

① 変動金利か固定金利かを確認する

2024〜2025年の日銀利上げにより、変動金利型の返済額は既に上昇している可能性があります。直近3カ月の利息返済額を確認し、契約当初より増えていないかチェックしてください。

② 「終身型」か「期間設定型」かを確認する

期間設定型の場合、契約期間満了時に元金を一括返済しなければなりません。自分の契約の満了時期と、そのときの対処法を今すぐ確認してください。

③ ノンリコース型かリコース型かを確認する

リコース型の場合、売却額が借入残高を下回ると子ども・相続人が差額を負担します。契約書を今すぐ確認し、リコース型であれば相続人に必ず伝えておいてください。

④ 配偶者を連帯債務者にしているかを確認する

連帯債務者でない配偶者は、本人死亡後に家を退去しなければならないリスクがあります。同居の配偶者がいる場合は必ず確認し、必要なら金融機関に変更申請を検討してください。

⑤ 担保評価の状況を定期的に確認する

融資残高が担保評価額の何%に達しているかを確認してください。80〜90%に近づいている場合は金融機関に相談が必要です。特に地方物件・郊外物件は評価下落リスクが高いので注意。

⑥ 相続人全員に契約内容を共有する

死後のトラブルを防ぐため、子どもや相続人に「自宅にリバースモーゲージを設定していること」「ノンリコース型かリコース型か」「現在の融資残高の目安」を今すぐ伝えておくことが重要です。

⑦ 固定金利型への切り替えを金融機関に相談する

リ・バース60では2024年から全期間固定金利型が選択可能になりました。変動金利型を利用中なら、今後の金利上昇リスクを避けるために固定金利型への切り替えを金融機関に相談することを検討してください。


🎯 FPからの結論:それでもリバースモーゲージを選びますか?

私がリバースモーゲージに否定的な理由を端的にまとめます。

  1. 自宅は高齢者の最後の砦です。その砦を担保に、変動金利で長期借入するリスクは非常に高い
  2. 長生きするほど不利になる商品設計は、高齢者にとって本質的に不向きです
  3. 金融機関が有利になるよう設計されており、「高齢者の味方」ではありません
  4. リバースモーゲージを検討する前に、生活費の見直し・公的給付の活用・リースバック・ダウンサイジングなど他の選択肢を必ず検討してください

どうしても資金が必要な場合は、家族・FP・弁護士を交えた3者での検討を強くお勧めします。銀行の窓口だけで判断するのは絶対に避けてください。

(本記事のデータは2026年5月時点の公開情報に基づきます。最新情報は各金融機関・住宅金融支援機構の公式サイトでご確認ください。)


📚 参考・出典

この記事を書いた人

fp.yamagishi

金融機関に勤務しながら、副業でファイナンシャル・プランナーをしています。大学卒業後に金融機関に勤め、10年勤務した後、同業に転職。
25年以上の金融機関勤務経験を活かし、皆さんの資産運用・お金の問題を支援できましたらと考えています。

【資格】
・ファイナンシャルプランナー(CFP)
・FP技能検定1級取得
・貸金業取扱主任者