ピカソの名前しか知らなくても行きたくなる——国立新美術館「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」

「ピカソ」と聞くと、なんだか難解で、キュビズムの絵ばかりで敷居が高い——そんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。実は今、国立新美術館(六本木)で開催されている「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」は、そんな先入観を軽やかに覆してくれる展覧会です。この記事では、実際に鑑賞して感じたことを中心にまとめました。

展覧会の概要

  • 会場:国立新美術館(六本木) 企画展示室2E
  • 会期:2026年6月10日(水)〜9月21日(月・祝)
  • 休館日:毎週火曜日(※8月11日は開館、8月12日は休館)

本展は、パリ国立ピカソ美術館が所蔵するパブロ・ピカソ(1881〜1973年)の作品約80点を、英国人デザイナーポール・スミスが空間デザインを手がける形で紹介する国際巡回展です。もとは2023年にパリで開催されたピカソ没後50周年記念の特別展がベースになっており、日本での開催は国立新美術館のみ。他館への巡回予定は今のところ発表されていないため、気になる方は会期中に足を運んでおくことをおすすめします。

ポール・スミスのセンスが光る、ポップで見やすい展示

この展覧会最大の特徴は、ピカソの作品そのものだけでなく、ポール・スミスが手がけた空間デザインそのものが見どころになっている点です。

作品は年代ごとに、その時期の色彩や作風に合わせた壁紙・空間演出とともに展示されており、いわゆる「美術館らしい静かな白い壁」とはまったく違う、ポップで遊び心にあふれた空間になっています。ファッションデザイナーならではのセンスが随所に感じられ、美術に詳しくない人でも「見ていて楽しい」と感じられる工夫が随所にちりばめられています。

キュビズム以前のピカソに驚く

ピカソといえばキュビズムの、あの独特な多視点の絵を思い浮かべる方が多いと思いますが、本展ではキュビズム以前の、いわゆる「ピカソっぽくない」作品も数多く展示されています。

これがとにかく衝撃的でした。写実的で伝統的な技法をしっかりと踏まえた初期作品のクオリティの高さを目の当たりにすると、「ああ、ピカソは本当に天才だったのだ」と、あらためて実感させられます。型を破ったのではなく、型を完全に習得したうえで、あえて壊していったのだということがよく分かる構成です。

《アヴィニヨンの娘たち》に見るアフリカ文化の影響

キュビズムの先駆けとして知られる《アヴィニヨンの娘たち》に連なる系統の作品では、アフリカの彫刻・仮面芸術からの影響が色濃く感じられる作風が印象的でした。西洋絵画の伝統とは異なる造形言語を、大胆に自身の表現へと取り込んでいく姿勢そのものに、ピカソの貪欲な探究心を感じます。

スペイン時代——墨絵のような闘牛の絵の不思議な力

スペイン時代の作品の中でも特に印象的だったのが、闘牛をモチーフにした、まるで墨絵のような作風の絵です。一見、さらっと素早く描かれたように見えるにもかかわらず、そこから立ち上がってくる情景の臨場感には、不思議な迫力があります。線の少なさと、喚起される情報量のギャップに、思わず見入ってしまいました。

《ゲルニカ》を彷彿とさせる牛と馬の絵

会場には、後の代表作《ゲルニカ》に通じる、牛と馬をモチーフにした作品も展示されていました。あの戦争の悲劇を描いた大作へとつながっていく、ピカソの中でのモチーフの変遷を追える構成になっており、《ゲルニカ》を知っている人ほど、その萌芽を発見する楽しみがあります。

縞模様のTシャツをモチーフにした作品

意外性という点では、縞模様のTシャツをモチーフにした作品も印象に残りました。日常的で身近なモチーフでありながら、ピカソの手にかかると独特の造形へと変換されていく様子が興味深く、こうした「身近なものへの視点」もまた、彼の天才性の一端を物語っています。

マネへのオマージュ作品

会場には、印象派の先駆者エドゥアール・マネの絵画をオマージュした作品もありました。先人の作品を自分なりに再解釈し、まったく新しい表現へと昇華させる姿勢は、ピカソが単なる「独創の天才」ではなく、美術史そのものと絶えず対話し続けた画家であったことを物語っています。

付き合った女性ごとに変化する作風

本展を通して強く感じたのは、ピカソの作風が、その時々の恋人(パートナー)によって大きく変化しているという点です。誰と過ごしていた時期の作品かによって、色彩や描写のトーンがはっきりと変わっており、ピカソにとって創作と人生・恋愛が、いかに密接に結びついていたかを実感できる構成になっています。

生涯で描いた作品数にも驚かされる

ピカソは、ギネスブックにも「史上最も多作な美術家」として記録されている人物です。生涯に制作した作品数は諸説ありますが、絵画・デッサンが約13,500点、版画が約10万点、挿絵が約3万4,000点、彫刻・陶器が約300点など、総数はおよそ15万点にのぼるとされています。91年の生涯で単純計算すると、1日あたり1.5点というペースで作品を生み出し続けていた計算になり、その圧倒的な生産性にもあらためて驚かされます。

こんな人におすすめ

  • ピカソが好きな方はもちろん
  • 「キュビズムはちょっと苦手…」という方
  • 美術館は敷居が高いと感じている方
  • ピカソの名前しか知らない、という方

キュビズム以前の作品や、ポール・スミスによるポップな空間演出のおかげで、美術に詳しくない人でも十分に楽しめる構成になっています。「ピカソ=難解」というイメージを持っている方にこそ、ぜひ見てほしい展覧会です。

まとめ

  • 国立新美術館で2026年9月21日まで開催中、日本ではこの会場のみでの開催
  • ポール・スミスによる年代・作風に合わせた空間デザインが、鑑賞体験そのものを豊かにしている
  • キュビズム以前の作品からアフリカ文化の影響、スペイン時代の闘牛画、《ゲルニカ》につながるモチーフ、日常的な題材まで、ピカソの多面性を一度に体感できる
  • 恋人ごとの作風の変化からは、創作と人生の結びつきの深さが伝わってくる
  • 生涯の制作数はおよそ15万点ともいわれ、質・量ともに圧倒的な画家であったことを再認識させられる

「いろいろな画風を持つピカソは天才」という言葉しか浮かばない——そんな感想を抱かせてくれる、見応え十分の展覧会でした。会期は2026年9月21日まで。ぜひ、その目で確かめてみてください。


本記事は展覧会の公式情報および筆者の鑑賞体験をもとにした個人の感想を含む内容です。会期・展示内容等の詳細は、来館前に必ず国立新美術館の公式サイトでご確認ください。

参考にしたサイト

この記事を書いた人

fp.yamagishi

金融機関に勤務しながら、副業でファイナンシャル・プランナーをしています。大学卒業後に金融機関に勤め、10年勤務した後、同業に転職。
25年以上の金融機関勤務経験を活かし、皆さんの資産運用・お金の問題を支援できましたらと考えています。

【資格】
・ファイナンシャルプランナー(CFP)
・FP技能検定1級取得
・貸金業取扱主任者