金利のある世界に戻りつつある今、これまであまり注目されてこなかった「個人向け国債」に関心が集まっています。銀行預金よりも金利が高く、国が発行する債券なので安全性も高い——そう聞くと魅力的に感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、個人向け国債の概要、購入時の注意点、そして数ある選択肢の中でなぜ「変動10年」が有力なのかを、10分程度で読める形にまとめました。あわせて、銀行預金・オルカン(全世界株式インデックスファンド)との違いや、どんな人に向いているかも整理します。結論を先に言うと、私自身のスタンスは変わらず「現金+オルカンのシンプルな資産構成」がおすすめですが、その理由もあわせてお伝えします。
個人向け国債とは何か
個人向け国債は、国(日本政府)が個人投資家向けに発行する債券です。国にお金を貸し、その利子を受け取る仕組みで、満期まで保有すれば元本と利子が支払われます。1万円単位から購入でき、証券会社や銀行の窓口で取り扱っています。
タイプは3種類あります。
| タイプ | 金利の仕組み | 満期 | 2026年8月募集分の利率 |
|---|---|---|---|
| 変動10年 | 半年ごとに適用利率が見直される変動金利 | 10年 | 1.87% |
| 固定5年 | 発行時の利率が満期まで変わらない固定金利 | 5年 | 2.06% |
| 固定3年 | 発行時の利率が満期まで変わらない固定金利 | 3年 | 1.71% |
いずれも年率0.05%の最低金利保証があり、金利がどれだけ下がってもこれを下回ることはありません。
購入の注意点
- 中途換金は発行から1年経過後:それより前は原則として換金できません
- 中途換金には調整額がかかる:1年経過後に換金する場合、直近2回分の利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます。つまり、早期換金するとその分の利息メリットが目減りします
- 元本割れのリスクは低いが、ゼロではない:発行後1年を過ぎれば国が額面金額で買い取ってくれるため、市場価格の変動による大きな元本割れは避けやすい仕組みですが、中途換金調整額の分だけ受取額が減る点は理解しておく必要があります
- 利子には税金がかかる:他の金融商品同様、利子には20.315%の税金(源泉分離課税)がかかります
なぜ「変動10年」がいいのか
固定5年の方が現時点での利率(2.06%)は高く見えますが、金利が上昇局面にある今は、変動10年に軍配が上がりやすいというのが実務上の考え方です。理由は次の通りです。
- 変動10年の金利は、「基準金利(10年固定利付国債の実勢利回り)×0.66」という計算式で、半年ごとに見直されます
- 金利が上昇していく局面では、この見直しのたびに適用利率も上昇していきます。実際、変動10年の金利はこの1年で約1.9倍(0.97%→1.87%)に上昇しました
- 一方、固定5年・固定3年は発行時点の金利で固定されるため、その後さらに金利が上昇しても恩恵を受けられません
- 最低金利保証(0.05%)があるため、万が一金利が下がっても下限は確保されるという安心感もあります
つまり、「今後も金利が上昇していく可能性がある」と考えるなら、固定金利で今の水準に縛られるより、変動金利で上昇に追随できる変動10年の方が理にかなっている、という考え方です。
銀行預金との違い
銀行の定期預金金利は、現在の一般的な水準でおおむね0.2%程度にとどまっています。これに対し、個人向け国債(変動10年)の利率は1.87%と、単純比較で10倍近い差があります。
安全性の面でも、銀行預金はペイオフ制度により1金融機関あたり元本1,000万円までしか保護されませんが、個人向け国債は国が発行するため、発行体としての信用力は極めて高いとされています。まとまった資金の置き場所として、銀行預金だけに偏っている方は、個人向け国債も選択肢に入れる価値があります。
オルカンとの違い
個人向け国債とオルカン(全世界株式インデックスファンド)は、そもそもの性質がまったく異なります。
| 項目 | 個人向け国債(変動10年) | オルカン |
|---|---|---|
| 値動き | ほとんどなし(元本ベース) | 日々変動する(株式市場に連動) |
| 期待リターン | 現状1.87%程度(変動) | 長期的には年5〜7%程度が期待される(過去実績ベース) |
| 元本保証 | 実質的にあり(1年経過後) | なし(値下がりリスクあり) |
| 用途 | 元本を減らしたくない資金の置き場所 | 長期的な資産形成 |
国債は「守りの資産」、オルカンは「増やすための資産」という、そもそもの役割が違うものだと理解しておくことが重要です。
どんな人に個人向け国債は向いているか
- 元本割れを避けたい、守りの資金の置き場所を探している方:生活防衛資金の一部や、数年以内に使う予定のある資金の運用先として
- 銀行預金だけでは物足りないが、値動きのある商品にはまだ抵抗がある方:定期預金からの乗り換え先として検討しやすい
- 金利上昇局面を活かしたい方:変動10年なら、今後の金利上昇局面にも追随できる
それでも私は「現金+オルカンのシンプル構成」をおすすめします
ここまで個人向け国債の魅力をお伝えしてきましたが、私自身のスタンスとしては、多くの方にとっては「生活防衛資金+安心できる現金」を確保した上で、残りはオルカン(またはS&P500)に集中させるシンプルな構成が、最終的に管理しやすく、資産形成の効果も高いと考えています。
理由は次の通りです。
- 資産の種類を増やすほど、将来「どれから取り崩すか」で迷いやすくなる
- 個人向け国債は「守り」の性格が強く、長期的な資産の増加スピードはオルカンに及ばない
- 生活防衛資金として必要な分の現金をきちんと確保していれば、値下がりへの不安から個人向け国債を追加で持つ必要性は下がる
とはいえ、「値動きのある資産はどうしても怖い」「銀行預金よりは増やしたいが、株式に踏み出す勇気はまだない」という方にとっては、個人向け国債は現実的な選択肢の一つです。ご自身のリスク許容度や資金の使い道に応じて、無理のない形で取り入れることをおすすめします。
まとめ
- 個人向け国債は1万円から購入でき、最低金利0.05%が保証された安全性の高い商品
- 金利上昇局面では、半年ごとに利率が見直される「変動10年」が理にかなっている
- 銀行預金より高い金利が期待できるが、値動きのあるオルカンとは役割がまったく異なる
- 元本を減らしたくない資金の置き場所としては有力な選択肢だが、長期の資産形成の中心は、引き続き「現金+オルカン」のシンプルな構成をおすすめしたい
本記事の金利・条件等の情報は執筆時点(2026年8月)のものです。金利は毎月見直されるため、最新の情報は財務省の個人向け国債窓口サイト等で必ずご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。
参考にしたサイト
