
先日、佐渡島に旅行してきました。目的地に選んだ理由は、2024年に世界遺産登録された「佐渡島の金山」を、この目で見ておきたいと思ったからです。
ところが旅行の話を知人にしたところ、意外な反応がありました。知り合いのお子さんは「佐渡といえば、YouTuberのけえさん!」と目を輝かせていたのです。世界遺産のことは知らなくても、けえさんの動画で佐渡の存在を知っていたのだそうです。
「世界遺産登録の方が経済効果は大きいはず」——そう思っていた私ですが、調べてみると、それぞれに異なる強さがあることが見えてきました。この記事では、実際に旅した感想と合わせて、世界遺産とYouTuber、それぞれの「経済効果」の正体を探っていきます。
実際に訪れて感じた佐渡島の魅力
佐渡島は新潟県の沖合に浮かぶ、日本海側最大の島です。新潟港からジェットフォイルで約1時間、フェリーでも約2時間半とアクセスしやすく、都心からでも十分に日帰り〜1泊で楽しめる距離感でした。
世界遺産となった「佐渡島の金山」では、江戸時代から続く採掘の歴史を間近に感じられ、坑道内の見学は想像以上に迫力がありました。また、たらい舟の体験、トキの生息地としても知られる豊かな自然、新鮮な海の幸など、歴史・自然・食のすべてが揃った島だと実感しました。
世界遺産登録の経済効果
「佐渡島の金山」は2024年7月に世界文化遺産に登録されました。日本政策投資銀行(DBJ)と日本経済研究所による試算では、次のような経済効果が見込まれています。
年間経済波及効果 585億円 | 想定来訪者数(年間) 67.8万人 |
※日本政策投資銀行「佐渡島の金山 世界文化遺産登録を契機とした地域価値の向上に関する調査報告書」より
登録前は年間44万4,000人と見込まれていた来訪者数が、登録決定を受けて67万8,000人へと上方修正されました。宿泊費・飲食費・交通費・土産購入費などを含めた地域全体への波及効果は、じつに585億円にのぼると試算されています。
一方で、宿泊・飲食施設の不足や、案内できる人手の不足、冬季の来訪者確保といった課題も指摘されており、「効果を生かしきれるかどうか」は今後の受け入れ体制にかかっている状況です。
人気YouTuber「けえ【島育ち】」さんの影響力
一方の主役が、佐渡出身の大学生YouTuber「けえ【島育ち】」さんです。「さ〜ど〜が〜し〜ま〜」という独特のフレーズと、地元佐渡のあるあるネタで、Z世代を中心に絶大な人気を誇ります。
| 時期 | チャンネル登録者数 |
|---|---|
| 2024年2月頃 | 話題沸騰中(急成長期) |
| 2024年3月 | 約58万人 |
| 2025年5月 | 100万人突破 |
けえさんが活動を始めるまでは、佐渡を訪れる子どもの観光客はほとんどいなかったと言われています。しかし今では、動画に登場したスポットが子どもたちにとっての「聖地」となり、全国から親子連れが「聖地巡礼」に訪れるようになりました。
象徴的な例が、佐渡の日(3月10日)に開催された「佐渡ヶ島フェス2024」です。島外からの来場者だけで約900人、合計で約2,000人が集まりました。また、けえさんと行くバスツアーや、ふるさと納税の返礼品とのコラボ企画も実施されており、地域経済への波及がすでに具体的な形で表れています。
世界遺産 vs 人気YouTuber——強さの質が違う
ここまでの内容を整理すると、両者の「経済効果」には明確な違いがあることが見えてきます。
| 世界遺産登録 | 人気YouTuber | |
|---|---|---|
| 経済効果の規模 | 年間585億円と、金額としては圧倒的に大きい | 具体的な金額試算はないが、イベント単発で島外から数百〜千人規模を動員 |
| 効果が出るスピード | 登録準備〜認知拡大に長い年月がかかる | 動画1本がバズれば数週間〜数か月で急速に広がる |
| 主なターゲット層 | 歴史・文化に関心のある層、シニア層を含む幅広い世代 | Z世代・子育て世帯など、これまで観光と縁遠かった若年層 |
| 持続性 | 世界遺産という「資産」として半永久的に価値が残る | 個人の人気に依存するため、ブームが去るリスクもある |
本当に強いのは「両方の掛け算」
単純に金額だけを比べれば、世界遺産登録の経済効果の方が圧倒的に大きいのは事実です。しかし、けえさんの存在が持つ意味は、金額だけでは測れません。
世界遺産 安定した集客の土台 | × | 人気YouTuber 若年層への爆発的な認知拡大 |
世界遺産だけでは届かなかった「子どもたち・若い世代」に、けえさんの動画は確実に佐渡の魅力を届けています。そして子どもの頃に佐渡を訪れた経験は、将来また訪れたいと思うきっかけになるかもしれません。逆に、けえさんの動画をきっかけに訪れた家族が、金山などの世界遺産にも触れることで、地域の歴史や文化への理解が深まるという相乗効果も期待できます。
「歴史的価値による安定した集客」と「個人の発信力による爆発的な話題化」——このふたつが組み合わさることで、佐渡島は世代を超えて愛される観光地へと成長していくのではないでしょうか。
まとめ
今回の佐渡旅行を通じて、「経済効果」にはいくつもの種類があることを実感しました。国や自治体が推し進める世界遺産のような大きな政策的効果もあれば、一人のYouTuberの発信力が生み出す身近で速効性のある効果もあります。
これからの地方観光は、こうした異なる強みをどう組み合わせていくかが、持続的な成長のカギになりそうです。もし佐渡島にまだ行かれたことがない方は、ぜひ一度、歴史と若者文化が交差するこの島を訪れてみてください。
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