2026年5月、NHKの「おはBiz」でも取り上げられ話題になっているニュースがあります。「エンゲル係数が45年ぶりの高さになった」というものです。Xでもトレンド入りするほど注目を集めているこのテーマ、実際に家計にどんな影響があるのか、FPの視点でわかりやすく解説します。
📊 そもそもエンゲル係数って何?
エンゲル係数とは、家計の消費支出全体のうち、食費が占める割合のことです。
19世紀のドイツの統計学者エルンスト・エンゲルが発見した法則に基づいており、「所得が低いほど、食費の割合が高くなる」という傾向があります。
計算式はシンプルです:
| 計算式 | 意味 |
|---|---|
| エンゲル係数(%)= 食費 ÷ 消費支出合計 × 100 | 家計の中で食費がどれだけの割合か |
たとえば、月の消費支出が25万円で食費が7万円なら、エンゲル係数は28%になります。
一般的に、エンゲル係数が高いほど生活に余裕がないと言われてきました。戦後の日本は経済成長とともにこの係数が下がり続け、「豊かな社会になった」証明でもありました。しかし近年は逆行しています。
📈 エンゲル係数 45年間の推移
総務省「家計調査」のデータをもとに、日本のエンゲル係数の推移を見てみましょう。
| 年 | エンゲル係数 | 時代の背景 |
|---|---|---|
| 1970年 | 約34% | 高度経済成長期終盤 |
| 1975年 | 約32% | オイルショック後 |
| 1980年 | 約29% | 安定成長期 |
| 1981年 | 28.8% | 直近ピーク(当時) |
| 1985年 | 約27% | プラザ合意・円高進行 |
| 1990年 | 約24.5% | バブル景気 |
| 1995年 | 約23.5% | 阪神淡路大震災の年 |
| 2000年 | 約23% | IT バブル崩壊前後 |
| 2005年 | 約22.9% | 底値圏(最も豊かな時代) |
| 2010年 | 約23.3% | リーマンショック後 |
| 2015年 | 約25% | アベノミクス・円安開始 |
| 2020年 | 約26.5% | コロナ禍 |
| 2022年 | 約27.5% | ウクライナ侵攻・物価高 |
| 2023年 | 約28% | 食料品値上げラッシュ |
| 2024年 | 28.3% | 円安・物価高が継続 |
| 2025年度 | 28.8% | 🔴 45年ぶり高水準(NHK報道) |
1981年に記録した28.8%と並ぶ水準にまで上昇し、45年ぶりの高さとなりました。(出所:総務省「家計調査」、共同通信2026年5月)
🔍 なぜ今、エンゲル係数が上がっているのか?
今回の上昇は「収入が減ったから」ではなく、食料品の価格が急激に上がったことが主な原因です。3つの要因を見てみましょう。
① 円安の進行
日本は食料の多くを輸入に頼っています。小麦・大豆・トウモロコシなどの原材料は主にアメリカやカナダ、オーストラリアから輸入。円安になると輸入コストが上がり、パン・麺・食用油・飼料→肉の値段が連鎖的に上がります。
② 世界的な食料品価格の上昇
ウクライナ侵攻による穀物輸出の停滞、エネルギーコスト上昇による農業・輸送コスト増加など、世界全体で食料品価格が高騰しました。これは円安とは別の要因であり、日本だけでなく世界共通の問題です。
③ 異常気象による生鮮食品の高騰
国内でも猛暑・大雨・台風などの異常気象が頻発し、野菜・果物・魚介類の価格が乱高下しています。特にコメの価格高騰は記憶に新しいでしょう。
2025年の食料品物価上昇率は+6.8%で、食料品以外の物価上昇(+1.7%)を大きく上回っています。つまり節約しようにも、食べないわけにはいかないから支出が増えてしまうという状況です。
⚠️ エンゲル係数が高いとどんな影響がある?【注意点】
エンゲル係数が上がると、家計にはこんな影響が出やすくなります。
| 影響 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 貯蓄が減りやすい | 食費は削りにくいため、他の支出を削っても限界がある。気づけば貯蓄に回せるお金が少なくなる。 |
| 娯楽・自己投資が後回しになる | 食費が増えた分、趣味・旅行・学習などにかけるお金が圧迫される。 |
| 生活の満足感が下がりやすい | 「頑張って働いているのに豊かさを感じにくい」という心理的ストレスにつながる。 |
| 老後資産形成に影響 | 毎月の投資・積立金額を削る判断につながりやすく、長期的な資産形成に悪影響が出る。 |
特に注意したいのは、「食費だけ見て家計を把握したつもりになる」こと。食費は必要な出費ですが、全体のバランスを把握しないと、知らないうちに生活防衛資金や老後の貯蓄が削られていることがあります。
😊 ただ、係数が高いからといって不安にならないで!
ここで大切なことをお伝えします。エンゲル係数が高い=生活が苦しいとは限りません。
- グルメや食の楽しみにお金をかけているなら、係数が高くても豊かな生活の証
- 食料品の物価が上がったことが原因なら、あなたの家計管理の失敗ではない
- 日本全体で上がっているので、「自分だけが苦しい」わけではない
今回の上昇の主因は物価高です。家計調査では、実質的な食料消費量はむしろ▲1.2%減少しているのに、名目の食料支出は+5.5%増えているというデータが出ています。つまり「同じものを買っているのに、お金が余計にかかっている」という状況です。
大切なのはパニックにならず、自分の家計を正確に把握して、賢く対応することです。
💡 上手な節約・食費の管理方法7選
FPとして、ストレスなく食費を管理するための方法をご紹介します。「我慢の節約」ではなく「賢い選択」を意識しましょう。
① まず「自分のエンゲル係数」を計算してみる
全国平均は28.8%ですが、あなた自身の係数はいくつでしょうか?食費÷消費支出合計×100で計算できます。平均より高くても低くても、毎月の変化を追うことが大切です。家計簿アプリ(マネーフォワード、Zaim等)を使えば自動で計算できます。
② 食費の「予算」を月初めに決める
「なんとなく」使うのをやめて、月の食費予算をあらかじめ決めましょう。手取り収入の15〜25%が目安です。月の手取りが25万円なら、食費予算は3.75万円〜6.25万円です。
③ 「まとめ買い+週1回の買い出し」ルール
スーパーに行く回数が多いほど、無駄買いが増えます。週1〜2回の計画的な買い出しにするだけで、食費が10〜20%削減できるというデータもあります。冷蔵庫の中を確認してからリストを作って出かけましょう。
④ プライベートブランド(PB)商品を活用する
イオンのトップバリュ、セブンのセブンプレミアムなど、スーパーの自社ブランド商品は一般の有名ブランドより15〜30%安いことが多いです。品質も年々向上しており、日用品・食品の多くはPBで十分です。
⑤ 「旬の食材」を積極的に選ぶ
旬の食材は価格が安く、栄養価も高いのが特徴です。春はたけのこ・新玉ねぎ、夏はトマト・きゅうり、秋はさつまいも・きのこ、冬は白菜・大根……旬を意識するだけで食費を抑えながら栄養バランスも整えられます。
⑥ 外食費は「特別な体験」として予算を分ける
外食費と食料品費を一緒にしていると把握しにくくなります。家計簿では「食費(自炊)」と「外食費」を別管理にしましょう。外食は月に何回・いくらまでと決めておくと、メリハリのある食生活になります。
⑦ 「食費を削るより、収入を増やす」という発想も持つ
食費の節約には限界があります。FPとして正直にお伝えすると、月3〜5万円の節約より、収入を月3〜5万円増やすほうが長期的に効果的なケースが多いです。副業・スキルアップ・転職・投資などを並行して検討しましょう。
📋 まとめ:今日から実践できること8つ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| ① エンゲル係数を知る | 食費÷消費支出×100で自分の係数を計算する |
| ② 係数が高くても焦らない | 物価高が原因。自分の管理の失敗ではない |
| ③ 予算を決める | 手取りの15〜25%を食費上限の目安に |
| ④ 買い出し回数を減らす | 週1〜2回の計画買いで無駄遣いを防ぐ |
| ⑤ PB商品を活用 | 15〜30%安くなることが多い |
| ⑥ 旬の食材を意識 | 安くて栄養価が高い |
| ⑦ 外食費を別管理 | 食費と外食費を分けて記録する |
| ⑧ 収入アップも視野に | 節約だけでなく、稼ぐ力も同時に伸ばす |
エンゲル係数の上昇は社会全体の問題ですが、自分の家計を把握して対策を取れる人と取れない人では、5年後・10年後に大きな差が出てきます。今日からできることを一つずつ始めていきましょう。
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