住宅ローン 10年固定金利利上げ——住宅購入時・借り換え時、どんな影響がある?

2026年に入り、住宅ローンの金利が急速に上昇しています。特に10年固定金利は大手銀行で3%超えが当たり前になり、「いま家を買っても大丈夫か」「変動から固定に借り換えるべきか」という不安の声が増えています。

今回は、現在の金利状況から「5,000万円借りたらいくら違うか」の具体的な数字、そして「自分はどちらを選べばいいか」の判断基準まで、FPの視点からわかりやすくお伝えします。


① 2026年5月現在の住宅ローン金利状況

なぜこんなに金利が上がったのか?

まず背景を整理します。日本銀行(日銀)は2024年〜2025年にかけて政策金利を段階的に引き上げました。長年続いた「ゼロ金利・マイナス金利時代」が終わり、日本も「金利のある世界」に戻ってきたのです。

  • 2024年3月:マイナス金利解除(政策金利 0.1%へ)
  • 2024年7月:0.25%に引き上げ
  • 2025年1月:0.5%に引き上げ
  • 2025年12月:さらに追加利上げ
  • 2026年:引き続き上昇傾向、次の利上げも視野に

この政策金利の上昇が、住宅ローン金利に直接・間接に影響しています。

2026年5月の主要金利一覧

金利タイプ大手銀行(最優遇)ネット銀行(最安水準)特徴
変動金利0.9〜1.1%0.4〜0.6%半年ごとに見直し。日銀利上げで上がりやすい
10年固定金利2.6〜3.1%1.8〜2.3%10年間は金利が確定。以降は変動or再固定
全期間固定(フラット35)2.71%(2026年5月)35年間ずっと金利が変わらない

かつて変動金利と固定金利の差は0.5〜1%程度でしたが、現在は変動(大手0.9%)と10年固定(大手2.8%前後)で約2%の開きがあります。この差が、今後の「どちらを選ぶか」問題を難しくしています。


② 5,000万円借りたらいくら違う?——固定・変動の差額シミュレーション

条件:借入額5,000万円、返済期間35年で、各金利タイプを比較します。

金利タイプ適用金利月々の返済額総返済額利息総額
変動金利(大手銀行)0.9%約13.9万円約5,832万円約832万円
変動金利(ネット銀行)0.5%約12.9万円約5,432万円約432万円
10年固定(大手銀行)2.8%約18.6万円約7,810万円約2,810万円
全期間固定(フラット35)2.71%約18.4万円約7,749万円約2,749万円

※変動金利は「現在の金利が35年間変わらない」と仮定した場合の数字です。実際には変動します。

月々の差・利息の差を感覚で理解する

  • 変動0.9% vs 全期間固定2.71%:月々の差 約4.5万円、利息の総差額 約1,917万円
  • 変動0.9% vs 10年固定2.8%:月々の差 約4.7万円、利息の総差額 約1,978万円

固定金利を選ぶと、「金利が変わらない安心」の対価として約2,000万円を余分に支払うことになります。これが「固定の安心料」です。

変動が有利になるのか?固定が有利になるのか?——損益分岐点

変動金利が固定金利(2.71%)と同じ総返済額になるのは、変動金利が平均2.71%を上回った場合です。

現在の変動金利(大手0.9%)が2.71%まで上がるには、あと「約1.8%の利上げ」が必要です。日本の現状を考えると可能性はゼロではありませんが、急速にそこまで上がるかどうかは誰にもわかりません。

逆に言えば、「今後35年で変動金利の平均が2.71%を超えなければ、変動金利の方が得」ということになります。


③ 結局どっちがいい?——あなたの状況別・判断ガイド

「変動か固定か」は、お金の損得だけでなく、その人の生活・収入・心理的余裕によって答えが変わります。状況別に整理しました。

【変動金利が向いている人】

こんな人理由
✅ 収入が安定していて、繰り上げ返済の余力がある金利が上がったときにすぐ対応できる
✅ 返済期間が10〜15年以内(早期完済を予定)短期間なら利上げリスクが限定的
✅ 「月々の返済を少しでも抑えたい」当初の返済額が固定より大幅に低い
✅ 金利動向を定期的にチェックできる上昇したら借り換えや繰上げで対応可能
✅ 貯金・投資で金利上昇分をカバーできる資産があるリスクを自分でコントロールできる

【固定金利(10年固定・フラット35)が向いている人】

こんな人理由
✅ 「毎月の返済額が変わると困る」と感じる人家計の予算管理がしやすい
✅ 共働きだが、どちらかが離職する可能性がある収入が減っても返済額が変わらない安心感
✅ 住宅ローンに気を使いたくない・考え続けたくない「決めたら終わり」のシンプルさが魅力
✅ 今後さらに金利が上昇すると強く感じている今のうちに固定してリスクヘッジ
✅ 自営業・フリーランスなど収入が変動しやすい支出の固定化でリスク分散

【10年固定が特に有効なケース】

「全期間固定は高すぎるけど、変動は怖い」という方に向いているのが10年固定です。

  • 子どもが小さく、教育費ピーク(10年後)までは家計の安定を最優先したい人
  • 10年後に繰上げ返済や借り換えを検討できる余裕がある人
  • 10年後に金利状況を見直して、そのときベストな選択をしたい人

④ 借り換えを検討している方へ——今すべきか、待つべきか

変動金利で借りている人の現状

かつて0.3〜0.5%で借りていた変動金利ローンは、2024〜2026年の利上げを経て、現在は0.9〜1.1%前後まで上昇しています。今後さらに上がる可能性もあり、「固定に借り換えるべきか」と悩む方が増えています。

借り換えの基本3条件

住宅ローンの借り換えが「得」になるかどうかは、以下の3条件が目安です。

  • 金利差が1%以上ある(今の金利と新しい金利の差)
  • 残高が1,000万円以上ある
  • 返済残期間が10年以上ある

ただし、現在の状況は少し特殊です。変動→固定への借り換えは「金利が上がる前に固定化する」メリットがある一方、変動(現在0.9〜1.1%)→固定(2.7〜3.1%)では金利差がむしろ逆向き(借り換えると毎月の返済が増える)という状況です。

借り換えで考えるべきポイント

状況判断の方向性
変動金利で借りていて、金利がさらに上がりそうで不安固定への借り換えを検討する価値あり。ただし月々の支払増加を確認すること
固定金利(高め)で借りていて、より低い固定金利に乗り換えたい諸費用(約30〜50万円)と削減効果を比較。差額÷諸費用=回収年数が3〜5年以内なら有効
10年固定期間が終わり、次を選ぶ段階改めて変動・固定・別の銀行を比較。乗り換えが最も効果的なタイミング
残債が少ない(500万円以下)・残期間が短い諸費用の回収が難しいため、借り換えより繰上げ返済の方が効果的なケースが多い

⑤ FPとして伝えたいこと——「正解」はない、でも「自分の正解」はある

住宅ローンは「何十年も付き合う大きな借金」です。金利タイプの選択は、損得の計算だけでなく「自分が何を優先するか」で決まります。

私がFPとして多くの方の相談を受ける中で感じるのは、

  • 「変動が怖くて眠れない」と感じるなら→ 固定の安心料は払う価値がある
  • 「月々の返済を減らして、その分を投資や教育費に回したい」なら→ 変動で差額を運用する戦略も合理的
  • 「よくわからないから誰かに決めてほしい」→ それこそFP・銀行の担当者に相談を

特に今のような「変動と固定の差が過去最大水準」という状況では、どちらにも大きなメリットとリスクがあるため、ひとりで悩まず専門家に相談することをおすすめします。


まとめ

  • 📊 2026年5月現在:変動0.9〜1.1%、10年固定2.6〜3.1%、フラット35は2.71%
  • 💰 5,000万円・35年返済で変動と全期間固定の差は月々約4.5万円、総利息で約1,900万円
  • 🔑 変動が向いている人:収入安定・余力あり・短期返済予定・金利管理できる人
  • 🔑 固定が向いている人:返済額の安定を優先・共働きリスクあり・自営業・金利を考え続けたくない人
  • 🔄 借り換えは:残債・残期間・諸費用の3点を必ず確認してから判断
  • 💡 「変動か固定か」に唯一の正解はない。自分の優先事項を明確にして選ぶことが大切

参考サイト

この記事を書いた人

fp.yamagishi

金融機関に勤務しながら、副業でファイナンシャル・プランナーをしています。大学卒業後に金融機関に勤め、10年勤務した後、同業に転職。
25年以上の金融機関勤務経験を活かし、皆さんの資産運用・お金の問題を支援できましたらと考えています。

【資格】
・ファイナンシャルプランナー(CFP)
・FP技能検定1級取得
・貸金業取扱主任者