スピードスケートの高木美帆さんが国民栄誉賞を授与される見通しとなりました。冬季五輪の女子選手として日本史上最多となる通算10個のメダルを獲得し、2026年4月に現役引退。その圧倒的な実績を称えての授与検討は、多くのファンにとって喜ばしいニュースです。
この記事では、国民栄誉賞受賞にまつわる「お金の話」を中心に解説します。報奨金はいくら?記念品は何?受賞後のCMや講演料はどう変わるのか——歴代受賞者との比較も交えながら、FPの視点でまとめました。
高木美帆さんの実績:なぜ国民栄誉賞なのか
まず高木美帆さんの実績を整理しましょう。
| 大会 | メダル |
|---|---|
| 2018年 平昌五輪 | 金1・銀1・銅1(計3個) |
| 2022年 北京五輪 | 金1・銀3(計4個)※日本人の冬季五輪1大会最多 |
| 2026年 ミラノ五輪 | 銅3個 |
| 五輪通算 | 10個(夏冬通じて日本女子選手最多) |
| ワールドカップ通算 | 38勝(日本史上最多) |
| 世界選手権 | 2018年 総合優勝(日本勢初) |
これほどの実績を持つ選手が国民栄誉賞を受賞するのは、誰もが納得する話です。2026年4月の引退会見で「後悔も後戻りもない」と語った高木さん。受賞検討の一報を受け、SNSで「検討いただけるだけでも光栄」とコメントしています。
国民栄誉賞とは?制度の基本
国民栄誉賞は1977年に創設された内閣総理大臣による表彰制度です。「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があった者」を称えることを目的としています。
高木美帆さんが受賞すれば歴代29人目(1団体含む)となります。
授与されるもの:正賞と副賞
規程では以下が授与されます。
- 正賞:表彰状および盾
- 副賞:記念品または金一封(規程上は両方可能)
【核心】報奨金(金一封)はいくら?
ここが最も気になるポイントではないでしょうか。結論から言うと——
歴代28人の受賞者で「金一封」を受け取った人は一人もいません。
規程には「記念品または金一封」と書かれていますが、1977年の創設以来、実際には全員が「記念品」のみ受け取っています。金一封の金額すら一度も公表されたことがありません。
メディアでは「約100万円」という推測が流れることもありますが、これは根拠のない憶測です。つまり、国民栄誉賞は「賞金のない名誉賞」と言えます。
歴代受賞者の記念品一覧:実は個性的
賞金はないものの、記念品は受賞者の個性に合わせて選ばれており、なかなか興味深いです。
| 受賞者 | 受賞年 | 記念品 | 推定金額 |
|---|---|---|---|
| 王貞治 | 1977年 | 大カンムリワシの剥製 | 非公表 |
| 山下泰裕 | 1984年 | 置き時計 | 非公表 |
| 衣笠祥雄 | 1987年 | 銀製レリーフ | 非公表 |
| 美空ひばり | 1989年 | 銀製花瓶 | 非公表 |
| 高橋尚子 | 2000年 | 腕時計(パテック・フィリップ) | 数百万〜1,000万円超(市場価格) |
| 森光子 | 2009年 | 腕時計(オメガ) | 数十万〜数百万円 |
| なでしこジャパン | 2011年 | 熊野筆(化粧筆7本セット) | 数万円程度 |
| 吉田沙保里 | 2012年 | 金の真珠ネックレス(ミキモト) | 数十万〜数百万円 |
| 長嶋茂雄 | 2013年 | 金のバット(純銀・24金コーティング) | 非公表 |
| 伊調馨 | 2016年 | 西陣織の帯 | 数十万円〜 |
| 羽生善治 | 2018年 | 七宝彩釉群鶴文硯箱・熊野筆 | 非公表 |
| 羽生結弦 | 2018年 | 辞退 | — |
| 国枝慎吾 | 2023年 | 日本製ペアウォッチ | 非公表 |
記念品の金額は非公表ですが、高橋尚子さんへのパテック・フィリップの時計は市場価格で数百万〜1,000万円超になるものもあります。受賞者ごとに異なるため「一律いくら」という基準はありません。
なお、羽生結弦さんは「皆様と一緒に取れた賞という気持ちがあり、個人の気持ちを出したくない」として記念品を辞退した唯一の受賞者です。大谷翔平さんは授与の打診自体を「まだ早い」として固辞しています。
受賞後のお金の変化:本当の「経済的恩恵」はここにある
国民栄誉賞の直接的な報奨金はありませんが、受賞によって収入が大きく変わる可能性があります。それが「間接的な経済効果」です。
① CM・広告出演料の急増
国民栄誉賞受賞は「国が認めたトップ」という最高のお墨付きです。企業にとって広告起用のリスクが極めて低い存在となり、オファーが急増します。
| タレント区分 | CM出演料の目安(年間契約) |
|---|---|
| 一般有名アスリート | 100万〜500万円 |
| 五輪メダリスト(現役) | 500万〜1,500万円 |
| 国民的知名度のトップアスリート | 1,000万〜3,000万円以上 |
| 国民栄誉賞受賞レベル | 数千万円〜(複数社契約で億超えも) |
高木美帆さんはすでに明治「R-1ヨーグルト」やTOKIOインカラミなどのCMに出演実績があります。引退+国民栄誉賞というダブル効果で、新たな企業からのオファーが続くと予想されます。
② 講演料の跳ね上がり
引退後のアスリートの主要な収入源のひとつが講演活動です。
| 講師の知名度 | 1回の講演料相場 |
|---|---|
| 地域で有名なアスリート | 10万〜30万円 |
| 全国的に有名なアスリート | 50万〜150万円 |
| オリンピックメダリスト | 150万〜300万円 |
| 国民栄誉賞受賞クラス | 200万〜500万円以上 |
高橋尚子さん(マラソン金メダル・国民栄誉賞)は引退後も講演活動を精力的に続け、1回200万〜300万円程度のギャラが相場と言われています。高木さんも同水準以上の講演料が見込まれます。
③ 書籍・メディア出版
国民栄誉賞受賞は大きなニュースとなり、自叙伝や競技解説本の出版オファーが殺到します。人気アスリートの書籍は初版数万部以上も珍しくなく、印税収入(売上の10〜15%)も相当なものになります。
また、テレビの特番・ドキュメンタリー・解説者としての出演機会も増え、継続的なメディア収入が期待できます。
④ 所属企業との契約強化
高木さんが所属するTOKIOインカラミとの契約は2023年に3年で締結されています。国民栄誉賞受賞を機に契約更新・条件改善の交渉が有利に進む可能性があります。
税金はどうなる?記念品の課税関係
FPとして気になるのが税務上の扱いです。
国民栄誉賞の記念品は、所得税法上「一時所得」に該当する可能性があります。ただし、一時所得は年間50万円の特別控除があります。記念品の評価額が50万円以下であれば非課税ですが、高橋尚子さんへのパテック・フィリップのような高価な時計は50万円を超える可能性があります。
実際には政府から授与される記念品の課税実務は明確でなく、過去に課税された事例の報道もありませんが、FP的には念頭に置くべき点です。
他の受賞者と比べた高木美帆さんの経済的ポテンシャル
| 受賞者 | 受賞時の状況 | 受賞後の主な活動・収入源 |
|---|---|---|
| 高橋尚子 | 引退直後(27歳) | CM・講演・マラソン解説・書籍で年収数千万円規模 |
| 吉田沙保里 | 現役中 | 引退後もCM・バラエティ・解説で活躍継続 |
| 羽生結弦 | 現役中 | プロ転向後、アイスショーで年収10億円超との報道も |
| 国枝慎吾 | 引退直後 | テニス普及活動・CM・講演 |
| 高木美帆(予想) | 引退直後(31歳) | CM・講演・スケート解説・普及活動など |
高橋尚子さんと似た状況(引退直後・若い年齢・明るいキャラクター)から、高木さんも今後10年以上にわたり安定した高収入が見込まれます。
まとめ:国民栄誉賞の「本当の価値」はブランド力
国民栄誉賞をお金の観点でまとめると、次のようになります。
- ✅ 直接的な賞金はゼロ(金一封の前例なし)
- ✅ 記念品の金額は非公表(ただし受賞者ごとにこだわりの品)
- ✅ 受賞後のCM・講演料が大幅アップ(間接的な経済効果は数億円規模も)
- ✅ 「国が認めた人物」というブランドが生涯にわたり活用できる
高木美帆さんは32年ぶりとなるスケート選手への国民栄誉賞受賞(前回は1984年の速野暢子さん…ではなく、スケートでの前例は過去になく、スポーツ全体では多数)として、歴史に名を刻みます。
記念品の数百万円よりも、「国民栄誉賞受賞者」という肩書きが今後の活動に与える経済的価値は、数十倍・数百倍になる可能性があります。それが国民栄誉賞という制度の本質的な「価値」と言えるでしょう。
高木さんの今後のご活躍を、心より願っています。
